川辺謙一 鉄道の科学

電車の運転士の掛け声「出発進行!」の本当の意味 「これから出発するぞ」ではなかった

指差しをしない場合や声に出して言わない場合も

運転士が両手で操作するワンハンドルマスコンハンドル(東京メトロ10000系)

運転士が両手で操作するワンハンドルマスコンハンドル(東京メトロ10000系)

 なお、日本の鉄道では、すべての運転士が「出発進行」と言うわけではないようです。

 ある電車運転士によると、信号機に対する指差喚呼は、基本的に日本のすべての鉄道で義務付けられているようです。ただし、指の差し方や、声にする言葉は、鉄道事業者や路線によって異なることがあるそうです。

 たとえば、ワンハンドルマスコンハンドル(マスコンハンドルとブレーキハンドルを一体化させたハンドル)を運転台の中央に設けた電車では、運転士がそのハンドルを両手で持って操作するため、指差しを省略することもあるそうです。

 また、新幹線や地下鉄の一部路線のように、特殊な信号システムを導入した鉄道では、運転士が発車直前に「出発進行」と言わないようです。このような鉄道では、信号機が線路ではなく運転台にあり、窓越しに前方の信号機を確認する必要がないからです(駅や車両基地にある入換信号機は除く)。

【プロフィール】
川辺謙一(かわべ・けんいち)/交通技術ライター。1970年生まれ。東北大学工学部卒、東北大学大学院工学研究科修了。化学メーカーの工場・研究所勤務をへて独立。技術系出身の経歴と、絵や図を描く技能を生かし、高度化した技術を一般向けにわかりやすく翻訳・解説。著書多数。

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