好きなアイドルのコンサートを観るために、離れた場所まで“遠征”をする──そんな熱心なファンは少なくない。なかには全国ツアーの全公演に帯同する熱心すぎるファンもいるが、その裏には涙ぐましい節約の努力もあるという。熱心なファンたちの、遠征事情を紹介しよう。
神奈川県に住むフリーター・横山さん(30代男性)は、女性アイドルグループを日々応援するのが生きがいだ。普段は肉体労働系のアルバイトをして、コンサートの遠征費用を稼いでいる。
「実家暮らしということもあり、生活費はあまりかかりません。バイトで得たお金はほぼコンサートのチケット代とグッズ代、CD代、そして遠征費になっていますね。コロナ禍以降、ライブの本数は減っていますが、ツアーに全通(全公演を観ること)するときは、多くて全国10か所20公演とかでしょうか。もっと多いこともあれば、東名阪の3か所だけということもありますね。以前はサラリーマンだったんですが、なかなか休みが取れないので、会社をやめてアルバイト生活になりました」(横山さん)
横山さんは、遠征時の交通費や食費、宿泊費などはできるだけ抑えるようにしているという。
「高速バスで行ける場所であれば高速バスで行きますし、実家の車を自分で運転して行くこともあります。新幹線や飛行機はあまり使わないです。コンサートを最後まで見ていると、帰りの新幹線の時間に間に合わないなんてこともありますからね。コンサートの途中で席を立つなんてありえませんよ。
遠征先で夜を過ごす場合は、漫画喫茶で時間をつぶすことが多いです。24時間営業のファミレスに行くこともあります。ホテルに泊まるのは、時間をつぶす場所がまったくないときくらいです」(横山さん)
地方から東京に遠征するファンも少なくない。大阪に住む会社員の岡村さん(30代男性)は、とある女性アイドルグループのファンとして、東京で行われる“卒業コンサート”のために遠征することが多い。
「コロナ前は、握手会のために東京まで遠征するなんてこともありましたが、最近は卒業コンサートくらいに減りました。都内への遠征は、とりあえずコンサートのチケットを取って、行きの新幹線を確保すれば、そのあとはどうにでもなるので、ラクでいいです。大抵は、コンサートのあとオタク仲間と反省会と称して飲み会を開いて、遅くなったら漫画喫茶というコースが多いかな。
コンサートは週末が多いんですが、とりあえず朝まで時間を潰して、次の日の早い時間の新幹線で大阪に帰るという感じです。コンサートが日曜日の時は、月曜日に有給を取ることが多いです」(岡村さん)