近年、注目が高まっている洋上風力発電。2020年12月に政府が発表した「洋上風力産業ビジョン」では、2040年までに30~45GW(2018年実績の10倍強)という目標を掲げ、洋上風力発電が再生可能エネルギーの主力電源になることが期待されている。
一方で、国内の大手風車メーカーは次々と撤退しており、風車の導入は海外メーカーに頼っている。しかし、洋上風力発電が今後産業として発展していくことを踏まえると、風車の再国産化は早急に進めなければいけない。
もう一つ、風車の再国産化を進めなければいけない理由として、日本の風事情がある。欧米は広大な平野や緩やかな起伏地に風車を設置するが、日本は平野部が少ないので、山の中や丘の上など複雑な地形の上に建てる。風況(その場における風の吹き方)が目まぐるしく変わるため、外国製の風車だと壊れてしまう(特に小型風車)。
九州大学は風車開発が総合的にできる国内唯一の大学で、長年研究に取り組んできた。中心で活躍してきたのが同大名誉教授の大屋裕二氏で、発電効率が高い風レンズ風車(のちのレンズ風車)を開発した。風エネルギーを集中させることで発電効率を高めた風車で、通常の風車に比べて2~5倍の高出力(ロータ=風車回転部の面積基準)を達成している。
「風車ロータをディフューザ(入口から出口に向かって拡大する管)で覆い、出口の周囲に『つば』を付けています。これによって増速効果が得られ、風車による発電量は風速の3乗に比例するので、高い発電出力が達成できています」(大屋氏)
複数のレンズ風車を搭載したマルチタイプ
「風力発電がなかなか普及しない問題の一つに、風車の騒音があります。しかし、レンズ風車はブレードの先端渦がディフューザ内部の境界層と干渉して騒音が抑制されるので、通常の風車よりも静かです」(大屋氏)
レンズ風車を広く普及させるため、大屋氏は九州大学発ベンチャー企業として株式会社リアムウィンドを設立。九州地方を中心に、東北や北陸にも設置されており、すでに実用化が始まっている。