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注目高まる洋上風力発電 九州大学が研究する「レンズ風車」が切り開く可能性

レンズ風車の「風レンズ」のメカニズム:「つば」を設置することでディフューザの背後に渦が生じ、低圧部が形成される。風は低圧部をめがけて流れ込むので、ディフューザの入口付近では大きな増速効果が得られる

レンズ風車の「風レンズ」のメカニズム:「つば」を設置することでディフューザの背後に渦が生じ、低圧部が形成される。風は低圧部をめがけて流れ込むので、ディフューザの入口付近では大きな増速効果が得られる

 レンズ風車を洋上風力発電で活用すべく、博多湾に2基のレンズ風車と太陽光パネルを搭載したコンクリート製浮体を浮かべ、各種データを集める実証実験も行なった。沖合海域の海上風は陸上に比べて1~2割強く、海上実験でも、海岸線立地の同型風車よりも2倍の発電量が得られた。

「将来的には、洋上に浮体式エネルギーファームを設けることを計画していますが、そのためには漁業との共存が大きな課題となります。そこで、浮体周辺部に数十個規模の浮沈式生け簀を設備し、漁業との共存をはかります」(大屋氏)

 そして、より効率よく発電量を得るため、複数のレンズ風車を搭載した「マルチレンズ風車」も開発している。現在は総出力が1kWと3kWのレンズ風車が実用化されているが、さらに大型のレンズ風車の開発も行なっている。

 開発の中枢を担っているのは、2022年4月に設置された「九州大学洋上風力研究教育センター」。大屋氏の教えを受けた九州大学教授の胡長洪氏を中心にさらに研究に取り組む。

「目指しているのは、20MW級の洋上クラスタレンズ風車の開発です。イメージ図だけ見ると途方もない計画のように思えますが、同様の計画は風力発電の先進地域である欧州でも進められています。今後は洋上風力発電が再生可能エネルギーの主力になっていくので、国や自治体など、関係各所の協力を得ながら実現を目指します」(胡氏)

九州大学名誉教授の大屋裕二氏(右)と同大教授の胡長洪氏

九州大学名誉教授の大屋裕二氏(右)と同大教授の胡長洪氏

撮影/古川章

※週刊ポスト2022年11月18・25日号

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