老後は誰にとっても心配なもの。老後資金や介護問題など、さまざまな問題がクローズアップされるが、とりわけ不安が大きいのが「未婚一人っ子」だ。両親が亡くなった後は、パートナーや子供、きょうだいがいないことで、「頼れる」人がいなくなる可能性が高くなるからだ。未婚一人っ子たちは、老後不安に対してどのように向き合っているのか、その本音を聞いた。
母を安心させたい気持ちはあるが…
IT企業に勤める30代男性・Aさんは、最近、70代の母親に会うと、「お前の将来が心配だ」と言われることが増えたという。
「両親は僕が大学生の時に離婚。その後、父は亡くなり、身内は70代の母だけになりました。親戚付き合いもないので、この状況はヤバいなと思っていました。もう何年も前から、母から『一人っ子だから、自分がいなくなったら心配。是非いい人と巡り合ってほしい』と言われ続けています。母は自分の死後、息子が孤独になることを気にしているようなので、僕はこれ以上心配させないように、『友人や仕事仲間もいるし、大丈夫だから』と、笑顔で答えています」(Aさん)
だが、Aさんの胸中は複雑だ。実はAさんには結婚歴があるが、長続きせずすぐに離婚している。
「離婚の理由は、一言でいうと“妻の裏切り”です。そういった経緯から女性不信に陥っているので、母を安心させてあげたいと思いつつも、再婚に前向きになれないのが本音です。年収もそこまで高くはないので、たとえ再婚できたとしても、子供を持つのは厳しいと思いますね。ただ自分の周りは未婚や子供のいない人も多いので、そこまで気になりません。
先のことを心配すると、孤独感よりも恐怖に飲み込まれそうになるので、とにかく今は独身の趣味友達との連携を深めたりして、少しでもできることを地道にしていけたらと思っています」(Aさん)