企業概要
九州旅客鉄道(9142)は、JRグループの一角で九州を営業地盤とする鉄道会社。
多角化が進んでおり、鉄道運航のほか、不動産やホテル運営、建設、流通、外食と多岐に渡る事業を展開しているのが特徴。2022年3月期における事業別売上高比率は、運輸サービス31%、不動産・ホテル32%、建設13%、流通・外食13%、その他11%でした。鉄道会社としてはかなり分散が効いた収益基盤を持っています。
ちなみに、祖業で主力の運輸サービス事業内もバラエティーに富んだ内容となっています。運送サービスでは、九州新幹線や在来線、バス運行のほか、クルーズトレイン「ななつ星in九州」といった特徴ある観光列車、さらには航路運航(博多港、対馬市の比田勝港~韓国の釜山港)も運営しています。
こうした分散の効いた収益構造は、コロナ禍で旅行やホテルのマイナス影響を軽減するのに役立ったと見られます。特に、マンション分譲や賃貸、オフィス賃貸による安定収益源を持つ不動産賃貸事業はコロナでダメージを受けた業績を支える働きをしました。
注目ポイント
業績は好調。足元2023年3月期上半期業績は、黒字を取り戻し、コロナに起因する最悪期を脱したことが確認できる内容でした。人流回復に伴い、期を通して輸送サービスをはじめ、不動産・ホテル、流通・外食事業の回復が見込まれるなど見通しに明るさが戻ってきました。
そして、利益改善への期待も高まっています。
コロナ禍で進めてきた固定費削減などのコスト構造改革が効果を発現しつつあり、その効果による利益改善が見込まれる状況となっています。
同社は2020年3月期の鉄道事業の営業費用の1割である140億円の削減をターゲットに、固定費削減プロジェクトに取り組んでいます。今期は上半期中に69億円の固定費削減に成功。進捗率は49%と順調です。元々はコロナが長期化して鉄道旅客事業の収益が回復しない場合に備えて進めてきた事業改革ですが、これによってムダが排除され、筋肉質な構造となりつつあるのは評価されるべきところかと思います。収益が回復し、さらに開発パイプラインが完了したときの利益成長の幅が大きくなるからです。
【プロフィール】戸松信博(とまつ・のぶひろ):1973年生まれ。グローバルリンクアドバイザーズ代表。鋭い市場分析と自ら現地訪問を頻繁に繰り返す銘柄分析スタイルが口コミで広がり、メルマガ購読者数は3万人以上に達する。最新の注目銘柄、相場見通しはメルマガ「日本株通信」にて配信中。