【2】インフレの粘着性
CPIにピークアウトの傾向が見られたとはいえ、まだ単月での話です。7%台というインフレ率は依然として高く、特に住宅や賃金は一度上昇するとなかなか下がらない「粘着性」があると言われています。
そうした中でFRB(連邦準備制度理事会)高官たちのタカ派(金融引き締めを肯定する)発言が目立っていますが、これは、市場に冷静になるように促す意図があるのではないかと考えられます。
FRBはデュアル・マンデート(2つの使命)として、「物価の安定」と「雇用の増加」を掲げています。いまだ高いインフレ率が続いている以上は、警戒を怠らないという姿勢を見せることで、株価が過度に楽観的に動くことを抑えようとしているのではないか、と分析できます。
【3】次回FOMCの利上げ幅とターミナルレート
10月CPIの結果が市場予想を下回ったことにより、債券市場では長期金利が4.3%から3.8%程度まで下落し、12月開催のFOMC(連邦公開市場委員会)時の利上げ予想は、「0.5%利上げ」となる可能性が高い、という意見が目立っています。
ただ一方で、FRB高官たちによるタカ派発言により、一部市場関係者の中では「次回は0.75%利上げ」と予想する者もいます。そうした状況で、次回FOMCで政策金利とともに発表されるドットチャートで、最終的な利上げの着地点であるターミナルレートの予想が何%になるかは、今後の株価や景気を占ううえで最大の注目点となりそうです。
11月17日に講演したセントルイス連邦準備銀行のブラード総裁は、十分抑制的な政策金利は5~7%程度になるのではないか、と説明しており、FOMC後のターミナルレートが上昇する可能性がわずかながら懸念されます。仮にターミナルレートが上昇するとなれば、さらなる景気後退懸念とともに、ドル高・株安を招きかねません。
ここまで見てきたように、【1】中間選挙の結果、【2】インフレの粘着性、【3】ターミナルレート予想の変化などのリスク要因から、10月CPIの結果だけでは安心できず、米国株式市場はまだ伸び悩んでいます。
今後も次々と発表される経済指標や要人発言にアンテナを張って、金融引き締めの効果とFRB(連邦準備理事会)と市場のコミュニケーションを確認し、来年以降の株式市場の方向性を見ていくべきだと考えています。
【プロフィール】
森口亮(もりぐち・まこと)/個人投資家、投資系YouTuber。1983年、埼玉県生まれ。元美容師。「Excelで決算数値を管理して、有望な成長株を中・長期的に狙う」という手法で資産を10倍に。その後も着実に資産を増やしている。著書に『1日5分の分析から月13万円を稼ぐExcel株投資』(KADOKAWA)がある。YouTube「毎日チャート分析ちゃんねる」やnote(https://note.com/morip)を日々更新中。