そうしたなか、Aさんは卒業にこだわった。だからこそ、周囲で中退していった人たちの特徴を冷静に把握することができたようだ。
「想像と違った場合のギャップに弱いんです。大体、大学生は合コンばっかりしていて、イケメンや美女とたくさん知り合える、みたいな、華やかなイメージを持っていることが多い。でも、実際は友達だって意識しないとできないし、サークルに入っても楽しい人間関係ばかりじゃない。
そうすると、『あれ?こんなもの?』と、そのギャップに不満を抱くわけですが、努力して現状を変えるとか、他に楽しみを見つける、みたいな発想がないんです。辞めていった人たちのなかで、いちばんびっくりしたのは『彼女ができないから』というアホみたいな理由でしたが、インフルエンサーになりたいといって中退したヤツも、その後は何もしていませんね。
興味のない授業に出て単位をとるのが苦痛で、やるべきことは他にあるはずという理由から中退した人もいましたが、じゃあ何に興味があるのかと聞いても、結局出て来ない。経済的な理由以外で学校を辞めていくのは、常に現状に対して『これじゃない』と言う人たちが多かったです」(Aさん)
入学時に苦労してないから未練もない
アパレルショップで働く20代男性・Bさんも、Fラン大学の卒業生。卒業後学校に呼ばれ、在校生向けに学生生活の意義について話をしたことがあるという。
「あまりにも中退者が多いから、卒業した人に『学校生活って大事だよ』ということを語ってもらいたいとのことでした。そこで僕は、『ダラダラ学生生活を送るのではなく、目的意識をもって過ごしたほうがいい』という話をしました。例えば古着が好きだったら、ただSNSを見るよりも、そういうお店やサイトをたくさん見たり、実際に働いていてみると、いろんな発見があるよ、というようなことです。
ちなみに僕は、学生の間にとにかくたくさんの業界を見てみたかったので、何十個もアルバイトをしました。社会人になったら、なかなか難しいじゃないですか。キャッチもしたし、死体を拭くバイトもしました。いろんなバイト先でいろんな人がいるので、コミュニケーション能力は磨かれたと思います。今はアパレルブランドのショップ店員として働いています。自分のブランドをもつのが夢で、毎日が充実しています」(Bさん)
Bさんは、Fラン大の学生に中退が多い背景として、「大学へのこだわりのなさ」があるのではないか、と指摘する。
「1年生でバイトに忙しくなりすぎたり、自宅からの通学時間が長くて大学に行くのが面倒になり、出席しなくなる、といった理由で単位を落とし、2年生になる前に辞める人がかなりいました。4年生になり、最終的に単位が取りきれず、辞めた人もいます。
Fランは、基本的に推薦が多かったり、大した勉強をせずに来ていたりするので、切磋琢磨という発想は全くない。学校も学校で、結局推薦じゃないと人が集まらない、という側面もあるんですよね。偏差値の高い学校に行く人たちは、そこに至るまでが大変だから、なかなかその座は手放したくないじゃないですか。でもFランは簡単だから、そこに『もったいない』ともあまり思わないんでしょうね。
つまり、入学時に苦労していないので、努力する習慣がなく、辞めることに対して未練もないということです」(Bさん)