「為替の神様」の弟子
決算説明会で孫氏の口から名前が挙がった「後藤くん」とは──。
神奈川県鎌倉市出身、一橋大学社会学部を卒業後、安田信託銀行(現在のみずほ信託銀行)に入行、2000年にSBGに移った。
「一言でいうと、財務のプロです」と語るのは月刊誌『経済界』編集局長の関慎夫氏だ。
「1990年代以降、孫さんの傍らには常に財務のプロがいて、SBGの成長を後押ししました。1990年代はSBIホールディングスの北尾吉孝さんが活躍し、北尾さんが独立すると安田信託銀行で会長を務めた笠井和彦さんがSBGの取締役に就任した。その笠井さんに引き抜かれる形でSBGに移ったのが後藤さんです」
経済ジャーナリストの有森隆氏は、銀行員時代に「為替の神様」と呼ばれた笠井氏の影響力の強さを指摘する。
「孫さんから三顧の礼で迎えられた笠井さんは、ブレーンとして為替や金利の見通しを助言した。
2008年のリーマン・ショックで株価が大暴落し、上場廃止を申し出た孫さんを押しとどめ、その後の大躍進の道を開いたのは笠井さんです。SBGを投資会社に進化させる礎を築いたのが笠井さんであり、その薫陶を受けたのが後藤さんでした」
SBG入りした後藤氏は財務部長や関連事業室長を経て、2012年に常務執行役員に。2013年に急逝した笠井氏に代わり、ソフトバンクの財務面を支えてきた。関氏が解説する。
「2012年に孫さんが米携帯会社スプリント・ネクステルを買収する際、当初は社債で1兆6000億円の資金を調達する予定だったが、後藤さんがつなぎ融資を銀行の協調融資に切り替えて、低金利で資金を調達した。SBGの資金調達を変えたことは後藤さんの大きな功績です」