ソフトバンクグループ(SBG)を長く悩ませる孫正義氏の後継者問題。11月に行われた決算説明会で孫氏の口から「私よりも“後藤くん”が中心になるのが適切」と名前があがったのが、最高財務責任者で専務執行役員の後藤芳光氏(59)だ。注目を集める孫氏の後継者争いはどうなるのか──。【前後編の後編。前編から読む】
伏兵は弟
これまで孫氏の後継者はいくつもの名が出ては消えていった。
2014年、孫氏はグーグルの最高事業責任者だったニケシュ・アローラ氏をヘッドハンティングし、「最重要後継者候補」として副会長に据えた。同氏には総額300億円を超える報酬を与えたが、2016年6月に電撃退任。最近でも、孫氏が招聘したマルセロ・クラウレ氏など、後継者と目された3人の副社長は次々に孫氏のもとを離れている。だが、ここにきて冒頭の発言が飛び出し、後継レースが慌ただしくなってきたのだ。
経済ジャーナリストの森岡英樹氏は「日本人後継者」を予想する。
「以前は外国人を後継候補にしていましたが、結局は意見が対立して別れてしまう。また、現在のSBGの主力事業であるベンチャー企業への投資事業は、失敗して泥船化すると外国人はすぐ逃げ出す。結果的に後継者は日本人に落ち着く可能性が高いのではないか。そのなかで、後藤氏が有力候補の一人であることは間違いない」
森岡氏がほかに一目置くのはグループ傘下のソフトバンク株式会社で社長兼CEOを務める宮川潤一氏だ。花園大学文学部仏教学科を卒業した変わり種だが、通信技術のエキスパートでソフトバンクのエンジニアを束ねてきた。
「社長就任時、自腹を切ってソフトバンクの株を買っており、意欲と覚悟がうかがえます。孫さん好みの優秀な技術屋で、信頼度が高い。孫さんの動向次第ではありますが、私は後藤さんと宮川さんが後継者の2大候補であると思います」(森岡氏)
大穴は孫氏の実弟である孫泰蔵氏。『ガンホー・オンライン・エンターテイメント』を創業し、近年は国内外のスタートアップ企業の支援を行なう。
「孫さんは泰蔵さんに目を掛けていて、弟が東大受験に失敗した時は参考書を買い与え、勉強も指南して東大合格に導いた。直系である泰蔵さんの芽が潰えたわけではありません」(同前)