後藤氏の存在感を知らしめたのが、2019年11月に開催された2020年3月期第2四半期決算説明会だ。この時、壇上に立った孫氏はSBGの投資先の財務は独立採算で、赤字になっても投資先への救済投資は行なわないと断言し、こう付け加えた。
「ここを明確に言わないと後藤が僕を責めるんです。社長、大概にしてくれ、皆さん心配しているからちゃんと決意表明をしてくれと」
当の後藤氏は当時の状況について、『週刊ダイヤモンド』(2019年12月14日号)のインタビューでこう堂々と述べた。
〈ファンドの投資ポートフォリオにあるからといって、投資先を救済することは一切ない。だから「投資先の救済はやらない」ということを、孫さんからのメッセージとしてきちんと出してください、ときつく言った。それに対して孫さんは「そんなことはみんなわかるんじゃないか」と言う。だから「そんなもんじゃないですよ」と怒った〉
誰もが恐れる孫氏に遠慮せず、「モノ言う部下」を貫いた後藤氏。
同誌(2020年5月30日号)では自身の役割を〈財務担当として攻めの戦略が過度なリスクにならないようにそれを守る立場〉とも語っている。
孫氏の金庫番として、SBGの経営を知り尽くす自信をのぞかせた。
(後編に続く)
※週刊ポスト2022年12月9日号