いま、銀行では店舗の統廃合が行われている。市場環境の変化で、メガバンク3行はIT化による業務の効率化を急ピッチで推進。こうした動きのなかで、利用者からはさまざまな不満の声が上がっている──。【全3回の第2回。第1回から読む】
支店を削減する銀行の姿勢を如実に感じる場面に遭遇したというのが、関東地方在住の40代男性だ。
「メガバンク支店のATMコーナーに並んでいたところ、操作を始めた高齢女性が取引を先に進められなくなり、戸惑っていました。女性は行員を探している様子でしたが、誰も近くにおらず、時間だけが延々と過ぎた。並んでいた別の男性が窓口に声をかけ、ようやく行員が来たものの、ATMの操作すらおぼつかない女性に笑顔でネットバンクの利用を勧める始末。あきれ果てました」
先端のサービスが重要であるのはたしかだろうが、それについていけない利用者がいるのも事実だ。近年生じた利用者側の負担はほかにもある。
メガ3行をはじめとする各銀行では、新たに硬貨の取扱手数料を徴収するケースが増えてきた。現在、窓口での硬貨預け入れには、三菱UFJとみずほが1回101枚以上、三井住友は1日301枚以上から所定の手数料がかかる。
このほか、紙の通帳の発行や利用に手数料を課す動きも目立つ。
三菱UFJは今年4月から、新規開設口座で通帳を利用する際、年間550円を課している。みずほは2021年1月18日以降開設の口座に1冊1100円の発行手数料を、三井住友は同年4月以降開設の新規口座に年間550円の通帳利用手数料を課している(未成年や70歳以上は適用外など、各行が例外を設定)。
今年68歳になった、みずほ銀行OBで作家の江上剛氏はこう憤る。
「私もメガバンクの顧客軽視の姿勢に腹を立てています。紙の通帳の利用手数料を設けたのはネットバンクに誘導する思惑があるのでしょうが、我々のように紙の通帳に慣れた世代は、通帳で出入金をチェックしないと不安になるものです。しかし、そうした顧客の不安や有料化による負担を、メガバンク側は気にしているように見えない。最大限の顧客満足という視点は、銀行の利潤追求を前に蔑ろにされています」