現金を手元に置いておく選択肢も
住宅ローン見直しの王道である「繰り上げ返済」にも注意が必要だ。消費生活アドバイザーの丸山晴美氏はこう言う。
「繰り上げ返済によってその分の利息負担がなくなり、総返済額の圧縮につながるのは確かなので、一般論としては選択するべきです。老後の固定支出をなるべく減らそうと、退職金などを使って一括返済する人は多いですが、一方で、必ずしも繰り上げ返済をすべきでないケースもあります。たとえば、将来的な子供の教育費の目処が立っていない人、預貯金が(1年分程度の生活費である)300万円に満たない人、50代で老後資金の準備ができていない人は、繰り上げ返済をする前に立ち止まる必要があるでしょう。
そもそも、住宅ローンを組む際は団体信用生命保険に加入するのが一般的で、死亡時や特定の疾病で働けなくなった場合はローンの返済義務がなくなります。もし繰り上げ返済をする余裕があるなら、何かあった時に備えて現金を手元に置くことを優先してもよいのではないでしょうか」
金利上昇への不安から、焦って住宅ローンを見直す必要はなさそうだが、現下の値上げラッシュに収入が追いつかず、万一、住宅ローンの返済に窮したら、どうすべきなのか。
「延滞が3か月程度続くと、金融機関は保証会社から代位弁済を受け、債権が保証会社に移ります。最悪の場合、マイホームを取り上げられたうえにローンだけが残る事態を招きかねません。
ローン支払いが難しくなったら、延滞する前に、必ず金融機関に相談しましょう。現在、金融庁は金融機関に対し、利用者から申し出があれば、返済条件の変更に柔軟に対応するよう求めています。その結果、2020年から現在までに、10万人を超えるローン利用者が返済条件変更を申し込み、その9割以上が当面の返済額を減らしてもらうなどの条件変更を実現しています。あくまでも返済猶予で減免ではありませんが、緊急避難的に利用が可能です」
元金が大きい分だけ、住宅ローンの見直しは慎重かつ冷静な判断が求められる。
※週刊ポスト2022年12月9日号