確かに、11月以降、FRBのスタンスには徐々に変化が見られている。FRB内でもタカ派色の濃かったパウエル議長でさえ、同月下旬に開催されたイベント講演では行き過ぎた利上げがもたらす影響に懸念を示していた。ただ、依然としてインフレ圧力は根強く、利上げ停止は時期尚早との見解も維持した。つまり、利上げの影響を見極めるために、利上げ幅は縮小していくが、利上げ自体は継続していくということであり、利上げ停止の決断までのハードルは依然として高いことが示唆されている。
実際、米11月雇用統計で平均賃金の伸びが前月比+0.6%と市場予想(+0.3%)を大幅に上回ったほか、米11月ISM非製造業景気指数の支払価格の項目は70と拡大・縮小の境界値である50を依然として大幅に上回るなど、FRBがインフレファイターの姿勢を軟化させるには材料が十分でないとも考えられる。仮に、市場の予想通り、来年3月会合での利上げが最後になったとしても、インフレがFRBの目標である2%程度にまで低下してくることが濃厚になってくるまでは、しばらくは高水準の金利が据え置かれたままになる可能性が高い。
実際に将来のその時点になってみれば、深刻な景気後退に迫られて早期の利下げ転換を強いられるシナリオが実現することは十分に考えられるとしても、少なくとも今月開催されるFOMCの時点では、そうしたシナリオを匂わすことはしないだろう。将来はともかく、今現在のFRBが自ら政策のフリーハンドを手放すようなことをするとは考えにくい。
そのため、今回のFOMCで示される政策金利・経済成長見通しには注意が必要だ。11月28日、ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は来年末の見通しとして個人消費支出(PCE)デフレータの伸び率で3.0-3.5%、失業率で4.5-5.0%との見解を示していた。いずれも前回9月FOMCでFRBが公表した見通し中央値(2.8%、4.4%)より高く、スタグフレーション(物価高と景気後退の併存)的な予想だった。米11月ISM製造業景気指数が50を下回った際には景気後退を警戒し、神経質に株式市場が下落した姿が思い出されるが、今回のFOMCでこうしたスタグフレーション的な見通しを示された場合にどう反応するかには注意が必要だろう。来年の景気後退が警戒されつつある中、仮にFOMCの結果がマイルドなものに終わったとしても、あく抜け感による上昇がどこまで続くかは不透明と言わざるを得ない。
今週のスケジュールは12日に11月企業物価指数、10-12月法人企業景気予測調査、13日に米11月CPI、米FOMC(~14日)、14日に12月日銀短観、10月機械受注、パウエルFRB議長会見、15日に11月貿易収支、中国11月鉱工業生産、中国11月小売売上高、英国金融政策委員会、欧州中央銀行(ECB)定例理事会、米12月ニューヨーク連銀製造業景気指数、米12月フィラデルフィア連銀製造業景気指数、米11月鉱工業生産、米11月小売売上高、などとなっている。