2022サッカーW杯カタール大会は深夜放送でも日本から多くの視聴者が声援を送った。それだけでなく、クロアチア戦では解説の本田圭佑が「ここ埼スタ?」と驚くほど、会場にも日本人の姿が目立った。余計なお世話だが、遠く離れたカタールにいる間、仕事はどうしていたのか。
日本の初戦ドイツ戦が行なわれた11月23日。FIFA(国際サッカー連盟)の公式ツイッターアカウントに、〈Dear My BOSS〉と書いた紙を掲げて観戦する日本人男性の写真(別掲)が投稿され、大きな話題となった。その紙には続けてこう書かれていた。
〈Thank you For MY 2 WEEK OFF !(親愛なる上司へ。2週間の休みをありがとう)〉。
試合後、男性が勤務するNTT東日本の公式アカウントが〈休暇とW杯を楽しんでください。上司より〉と英語でリプライしたことで、さらに話題が拡散。SNS上では〈どんだけホワイト企業やねん〉など、社員に休暇を認めた企業姿勢に賞賛の声が上がった。
この件についてNTT東日本は、「充実した休暇をとってもらうことは社員のエンゲージメント向上にもつながると考えており、社員が働き方を工夫して有意義な休暇を過ごしているのであれば望ましいこと」(経営企画部広報室)とコメント。W杯観戦休暇への理解を改めて示した。
有給休暇は労働者に認められた権利とはいえ、“まとまった休みなんて難しいよな~”と感じる人は多いだろう。クロアチア戦までの約2週間、カタールで声援を送り続けた人の“仕事事情”を現地と電話取材で聞いた。
勤続20年、マーケティング会社で事務職を務める45歳女性が語る。
「入社時の面接で、『W杯は観に行くので休ませてほしい』と言いました。それでもよければ採用してください、という意味で。実際に入社後は、2006年ドイツ大会から毎回、現地で観戦しています」
当初、今大会は予選リーグ3戦が終わったら帰国予定だった。
「まさかスペインに勝つとは。翌朝、上司と電話で話したら『当然、延泊するんでしょ』と言われ、背中を押してもらいました。パソコンを持参したので、1週間くらい前からは観戦の合間にリモート業務を続けています」