不動産業者の甘い誘い文句
こうした判決にも勢いづいて政府・与党は“節税封じ”に乗り出したとみられるが、どういった新ルールになるかは不透明だ。木下氏が言う。
「以前は同じマンションの高層階も低層階も、同じ評価額でしたが、2017年の税制改正ではこれを見直し、上層階と下層階で固定資産税評価を変えた。しかし、50階の物件の評価額が1階に比べて1割程度上昇するにとどまり、節税に歯止めはかからなかった。今回も恐らく建物部分の評価方法を見直すことになるのだろうが、具体的な方向性についてはまだ予想がつかない」
そうしたなかで、相続税対策としてマンション購入を検討する場合は、何に注意すればいいのか。
「まず、政府がタワマン節税を抑えようとしているとの報道を受けて、不動産業者が“早くて2024年4月からの改正だから駆け込み購入すべき”という営業を掛けていますが、誘い文句に安易に乗らないことです。“改正前に購入した人には新しいルールを適用しない”という可能性はゼロではないが、相続税に関してはそうした例外を設けないことが普通にある。もう少し具体的に改正内容が判明するまで様子を見るべきだと思います」(木下氏)
それに加えて、購入に際しては税務署に睨まれないような買い方にすることも重要だという。
「高齢の人が多額の借り入れをして物件を購入すると、税務当局に過度な節税と睨まれるリスクがあります。最高裁判決のケースでも、融資をした銀行の行内で回覧された“相続対策のための不動産購入”と書かれた稟議書が証拠として提出され、相続税を抑えるためのマンション購入だと裁判所に認定されたかたちです。そうしたやり方は避けるべきでしょう。
そもそも高齢になってのマンション購入だと、買ってからすぐに亡くなってしまうリスクがある。亡くなる3年前以降に購入した不動産は、税務署から狙われやすいとされます」
制度変更が迫っているからと焦って高い物件に手を出すと、いちばんの大火傷になりかねない。
※週刊ポスト2022年12月23日号