コロナ対策の巨額のバラ撒きを取り戻すつもりなのか、岸田政権は様々な税・保険料の「負担増」を画策している。介護保険も制度改定待ったなしだ。2024年度に予定される制度見直しに向け、国の社会保障審議会の議論が大詰めを迎えている。
3年に一度の改定に向けた骨子が示されると、介護現場からは「史上最悪の改定」との声が漏れた。ケアタウン総合研究所所長の高室成幸氏が語る。
「利用者と介護事業者にとって厳しい改定となることは確実です。今後の数々の負担増に向けた議論も進行中です」
介護保険はどう変わるのか。高室氏は「2割負担の拡大」を指摘する。
「介護保険サービスは原則、利用者の1割負担となっています。国は改定でその原則1割負担に切り込み、2割負担の対象を拡大する方針。まずは線引きとなる所得の水準を下げて2割負担を増やし、将来的には原則2割負担、収入が多ければ3割負担とすることも視野に入っています」
現在、要介護認定を受けている人の約9割が1割負担だが、改定により自己負担が一気に倍増する人が大量に出てくる可能性がある。
介護保険が始まった2000年に月2911円だった全国平均の介護保険料は現在6014円。今後も保険料のアップが続く見込みだ。
「介護保険料負担者の対象を拡大するため、被保険者の年齢(現在は40歳以上)を引き下げる議論もあります。また、これまで無料だったケアプラン作成を有料にして利用者負担とする流れもあり、多方面からの負担増が計画されています」(高室氏)
負担増に加えて介護保険のサービスカットも検討される。2015年度から、要介護度のうち軽い「要支援1・2」のサービスの一部を介護保険から切り離し、市町村が行なう「総合事業」に移行した。2024年度改定では「要介護1・2」を総合事業に移すことが議論されたが、こちらはひとまず見送られている。
「介護保険は国が報酬や人員基準などを定めますが、総合事業は市町村の事業で、自治体の懐事情に左右されます。財政的に厳しい市町村はコストカットせざるを得ず、要介護1・2の人が受けられる訪問介護や通所介護などの生活援助サービスの質が下がる可能性がある。
今回は見送られたものの、今後、2027年や2030年に予定される改定では要介護1・2の総合事業への移行の議論が本格化すると思われます」(同前)