2025年に患者数が700万人に上ると予測されている「認知症」。老親のどちらか一方でも患うと、「相続」に大きな影響を及ぼすことになる。認知症になった後では、親子の間でもあらゆる手続きが一筋縄ではいかなくなる。特に、遠方に住む老親と久しく会うことができていないケースなどは注意が必要だ。
ファイナンシャルプランナーで介護・暮らしジャーナリストの太田差惠子氏はこう語る。
「親の認知症は電話で話す程度では気付きにくく、子供が気付いた時には重度の認知症だった、というケースは多い。将来の相続などに必要なものの保管場所がわからなくなってしまわないよう、定期的にチェックする必要があります。兆候を掴むポイントは、親が毎日触れる『冷蔵庫』です。実家の冷蔵庫に同じものが大量にあったり、腐ったものが残っていたら要注意。少しでも兆候が見えたら、親子でじっくり話し合うことが重要です」
親が認知症になる前に、親子で済ませておくべき28項目を、チェックリストの形で表に示した。これらは、親が元気なうちに済ませておかないと、思わぬトラブルや苦労を招くことになる。以下、具体的に解説していこう。
まずは相続税の申告時に混乱しがちな金融資産の確認だ。太田氏は、印鑑や通帳の保管場所を共有しておくことが重要と指摘する。
「別居する子供が、認知症になった親の介護にかかる費用を払うために親の通帳や印鑑を探したが見つからない、というケースはよく聞きます。運良く見つかったとしても、口座が多くて大量の通帳と印鑑を紐づけるのに苦労することもある。預貯金口座をまとめ、印鑑や通帳の保管場所を共有して、子供が親の財産を把握できるようにしておきましょう」
金融資産のなかでも株や投資信託は売却しておくとよい。
「歳を重ねたら、認知症になる前に含み益がある段階で売却し、利益を確定したほうがいい。投資判断が鈍ると含み損があっても損切りできなくなり、認知症が進めば売買自体ができなくなります。認知症になった後に株がほったらかしにされるケースは多く、死後に遺族が知った時には含み損が膨らんで資産が大きく減ってしまう可能性もあります」(太田氏)