公的制度を使い倒す
介護保険の負担増は家計の圧迫だけではなく、必要なサービスを使わずに状態が悪化し、家族が介護離職に追い込まれたり「介護難民」が増えるなど、様々な弊害がある。
「さらに最近では要介護認定が厳しくなっています。以前は認知症を患えば要介護3程度の認定を取れたのがなかなか認定されず、介護保険のサービスを十分に受けるのが難しくなっている。防衛策としては、既存の公的サービスの併用が望ましい」(高室氏)
介護費を抑えるために活用したいのが「高額介護サービス費」だ。
「介護サービスの自己負担額が一定以上になると、超過分が払い戻される仕組みです。世帯全員が住民税非課税の家庭では月の負担上限が2万4600円で、これを超えた額が払い戻されます」(同前)
国の介護保険サービスで足りない分を自治体の制度で補う手もある。
「各自治体が独自に行なう高齢者サービスを『横出しサービス』と呼びます。たとえば東京都新宿区だと、65歳以上の要介護1を対象に月額7000円を上限におむつ代を助成する『おむつ助成金』などがあります」(同前)
各自治体により、1食500円程度の配食サービスやボランティアが高齢者宅を定期的に訪れる地域見守り協力員、タクシーチケットの支給など多様なサービスがある。
「他にも地域のシルバー人材センターでは登録済みの会員が買い物や料理、掃除などを格安の料金で行なってくれます。介護保険サービスを目いっぱい利用している人は制度の活用を検討してもいいでしょう」(同前)
これらの制度を賢く利用するには、いいケアマネジャーとの出会いが大切となる。
「一緒にケアプランを組み立ててくれるのがケアマネ。何でも相談できるケアマネがいれば、要介護認定や制度の利用の時に力になってくれるでしょう。いいケアマネのポイントは『話をしっかり聞いてくれる』こと。もしも相性が悪ければケアマネ事業所(居宅介護支援事業所)に相談すれば変更できるので、臆せず相談しましょう」(同前)
積極的に情報を得ることが介護保険改悪への備えになる。
※週刊ポスト2022年12月23日号