2023年、日本を取り巻く環境はどうなるのか。蒋介石の曾孫が台北市長に当選した台湾情勢の変化、連邦議会が“ねじれ状態”となったアメリカ共和党と民主党の争い、そして日銀総裁交代に伴う金融政策の行方──。経営コンサルタントの大前研一氏が予測する。
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11月の台湾統一地方選挙で与党・民進党が北部で敗れ、蔡英文総統が党首を引責辞任した。
台北市長には最大野党・国民党の蒋萬安氏が当選。43歳の蒋氏は、蒋介石・中華民国初代総統の曾孫で、国民党の若手ホープとされている。また、元総統の陳水扁氏(民進党)も馬英九氏(国民党)も台北市長を経て当選しており、蒋萬安氏が2024年1月の次期総統選に出馬する可能性は大いにある。
国民党は馬英九・前総統の「大三通(通信・通航・通商の緩和)」政策に見られたように対中話し合い路線だから、「抗中」の民進党よりも中国と対話ができる。
実は100年前も1924年に国民党と共産党の「国共合作」が成立している。もし国民党が政権を奪還したら、習近平・中国は飴と鞭で台湾併合を狙ってくるかもしれない。しかし、台湾の人々は決して親中路線を選んだわけではない。「対話している間は龍も噛みついてこないだろう」という習近平懐柔策に1票を投じたと見るべきなのだ。
一方、今回の選挙結果に、親台湾路線を推し進めてきたアメリカのバイデン政権はショックを受けたと報じられている。8月に民主党のペロシ下院議長が訪台したことで、米中関係や中台関係が一気に緊張したが、そのペロシ氏も、11月の中間選挙で共和党が下院を制したため、議長職を追われることになった。
連邦議会は上院と下院が“ねじれ状態”となり、バイデン政権は難しい舵取りを迫られることになった。台湾問題についてアメリカが身動きできないようであれば、その機に乗じて中国が攻勢をかけ、台湾海峡が緊迫するかもしれない。