2024年度に迫る年金改悪の全貌が見えつつある。10月25日、社会保障審議会年金部会で、5年に一度行われる年金制度の改正の議論が行なわれた。岸田政権が進める2024年度改正案は“令和の年金大改悪”と言われるほど、国民にとっては厳しい内容になる。改正案の内容を「年金博士」として知られる社会保険労務士の北村庄吾氏が全3回にわたって解説してくれた。第1回のテーマは「年金が目減りする」──。
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厚生労働省が社会保障審議会年金部会に提出した資料などから読み解ける“令和の年金大改悪”で検討されている内容は、大きく以下の5つに分けられます。
【1】国民年金の加入期間延長
【2】厚生年金の被保険者期間の延長
【3】厚生年金の適用拡大
【4】厚生年金のマクロ経済スライドの延長
【5】年金支給開始年齢の引き上げ
例えば「【1】国民年金の加入期間延長」は、現在の「20~60歳までの40年」から「20~65歳までの45年」に5年間加入期間が延びるというもので、テレビや週刊誌でも大きく取り上げられました。
注目すべきは「【4】厚生年金のマクロ経済スライドの延長」です。これにより、私たちの年金が目減りしていく可能性があります。
公的年金制度のいいところは、物価や賃金の上昇に合わせて年金額も上昇する仕組みです。物価が変動しても年金受給額の実質的な価値は変わらず、同じ生活水準を維持できるということになっています。
ところが、2004年度の年金制度の改正により年金受給額の計算に「マクロ経済スライド」という仕組みが導入されました。
これは賃金(物価)の上昇率から、「スライド調整率」と呼ばれる数字(現在は0.9%)を差し引いて年金額を変動させるというものです。つまり物価(賃金)が1.5%上昇しても、そこから0.9%を引いた「0.6%」しか年金額は増えないのです。年金の実質的価値は目減りしていくことになります。