孫への贈与メリット
さらに山本氏は「改正に左右されない贈与の方法もある」と話す。
「法定相続人となる子供への贈与は持ち戻しの対象ですが、孫や子の配偶者といった法定相続人以外への贈与は持ち戻しの対象外。改正によって持ち戻し期間が3年から7年に延びようが関係ないため、有効な節税手段と言えるでしょう」
そうした前提を踏まえ、手続きを進めていく。生前贈与の18の手順を整理したのが別掲表だ。まずは将来、相続税の課税対象となる財産を洗い出し、その総額が「基礎控除(3000万円+600万円×法定相続人の数)」を超えるかを確認。そのうえで贈与をするなら、贈与契約書で記録を残す。
「非課税枠内の110万円ではなく、例えば5万円オーバーした115万円を贈与して、5000円の贈与税の納税証明書を残すやり方もあります。その場合にも、贈与契約書があったほうがベターです」(山本氏)
今回の税制改正大綱では教育資金や結婚・子育て資金を一括贈与すると贈与税が非課税となる特例を延長する方向性となったが、「メリットがさほど大きい制度ではない。期間限定だが、駆け込み利用の必要はないでしょう」と山本氏は言う。
注意したいのは、財産が基礎控除の範囲内か少し超える程度なら、生前贈与による対策は必要ないという点だ。
「相続税が確実に多くかかりそうな人が対策を急いだほうがいいのは事実ですが、相続税がほとんどかからないはずの人がいちばん慌てているという現実もあります。冷静な判断が必要でしょう。慌てて生前贈与をしすぎて、自分の生活が逼迫してしまう失敗例はよくある。別掲表にあるような財産内容確認のための資料を揃えられれば、相続税の試算を含め、対策が必要かを税理士に相談する方法もあるでしょう」