前述した通り、その財源の一部が増税によって捻出されることに日本国内では批判の嵐が渦巻いているが、駐日米国大使のラーム・エマニュエル氏は自身のツイッターで〈民主主義を守る新たな時代が始まる。岸田首相の新しい国家安全保障戦略は、明白かつ明確な戦略的表明であり、日本の抑止力を前面に押し出すものだ。岸田首相は、インド太平洋とヨーロッパの同盟国・パートナーの中で、日本の地位を高めている〉と岸田氏をベタ褒めした。
その他にもバイデン大統領は〈日本の平和と繁栄への貢献を歓迎します〉と岸田氏の決断を持ち上げ、外交トップのブリンケン国務長官は〈日本は我々の不可欠なパートナー〉とするコメントを発表。サリバン大統領補佐官(安全保障担当)は〈防衛費を大幅に増やすという日本の目標は、日米同盟の強化と近代化につながる〉とし、オースティン国防長官も〈防衛費を大幅に増加させ、2027年にGDPの2%に到達させるという日本の決定を支持する〉とする談話を公表した。ベテラン政治ジャーナリストは言う。
「米国としては、台頭する中国の脅威と向き合うなかで、その防波堤となる日本の防衛費増によって米国の財政が助かるのはもちろんのこと、増えた予算を使って新たな兵器が購入されることによって米国の防衛産業が潤うというポイントもある。
岸田首相は強引にも見えるかたちで防衛費増税に突き進んでいるが、それは誰の顔色を見てのことなのか。米高官たちの反応を見ていると非常にわかりやすい。とはいえ、内閣支持率はいよいよ危険水準にある。岸田首相も『米国の言うことを聞く力』を発揮しているだけでは、早々に政権運営に行き詰まることになりかねない」
今回の防衛費増税で、岸田首相お得意の「聞く力」は日本国民ではなく、海の向こうに向いていることが露呈したようだ。(了)