世界情勢が混乱を極めるなか、低迷を続ける日本経済に復活の兆しはあるのか。インフレや増税、さらには利上げなど、懸念材料は多いが、果たして2023年は“失われた30年”を取り戻すターニングポイントになるのか。株式評論家の植木靖男氏、武者リサーチ代表の武者陵司氏、不動産コンサルタントの長嶋修氏が話し合った。【全3回の第3回。第1回から読む】
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植木:2023年の金融市場を読み解くうえで、気になるのが、やはり金融政策を司る日銀の総裁人事。
武者:おっしゃる通り。2022年末に事実上の利上げに踏み切りましたが、2023年4月の黒田総裁の退任によって金融政策がどう変わるのか、市場の注目度は高い。2%のインフレが定着し、いずれ日本の長期金利も上昇していくでしょう。となれば、金利が低い今のうちに借金をするなど、リスクを取ろうという動きが強まるのではないか。
日銀に余裕があるのは、かつてのように円高にも極端な円安にもならないので、為替に配慮する必要がないからです。
ただ、あまりに急激な円安になれば、巨額の為替介入も考えられます。仮に日本政府が保有する170兆円規模の米国債を一気に売るような状況になれば、直ちに50兆円ほどの為替差益が出て、日本にはものすごい余剰資金が生まれる。アメリカも急激な為替変動は好まないはずだから、容認せざるを得ないはずです。この「外貨準備高」は、使い方次第で何でもできる“打ち出の小槌”なんです。懐にそれほどの余剰がある国は世界中どこにもないから、うまく使えば日本は劇的に変わる。
植木:その一方で巨額の資金が日本株に流れ込み、かつてのバブルのようにマーケットの流動性が増すと、小型株では受けきれず、大型株に買いが集中します。そうなると注目は、三菱重工業とIHI。増額される防衛費関連でもありますが、それ以外に水素など再生エネルギーを手がけているのが買い材料。大型株では日立製作所も要注目です。
武者:失われた30年の裏返しで考えれば、ハイテク関連の復活はもちろん、インバウンド関連にも目を向けたい。日本の観光資源は世界でも圧倒的で、大きなリバウンドが期待できます。異常に割安だった資産価格の見直しに伴って、不動産や金融関連も期待できます。
植木:私はハイテク株の上昇はあと1~2年で終わると見ていて、その次は、やはり不動産株。大型株なら、三井不動産、三菱地所、住友不動産は外せない。