電力受給は依然逼迫しており、電力不足改善のため、政府は年内の「原子力発電所の再稼働」を目指している。2011年のような大惨事を引き起こさず、原発再稼働を進めるにはどういった点に目を向けるべきか。経営コンサルタントの大前研一氏が新たな原発運営方法を提言する。
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政府は原発の再稼働に舵を切ったが、私は本連載(『週刊ポスト』2022年10月28日号)で「岸田政権のやり方はあまりにも杜撰」「(福島第一原発事故の)総括も説明もないまま、なし崩しに再稼働することは危険であり、許されない」と書いた。その考えは変わっていない。
私も再稼働すべきだとは思う。なぜなら、電力需給が常に逼迫しているからで、たとえば1月は本州、四国、九州の8電力管内で予備率が4%台になる見通しだ。
さらに、IEA(国際エネルギー機関)によると、日本の電源構成(2022年9月)は、CO2を排出する化石燃料が約72%(天然ガス36%、石炭28%、石油など8%)を占め、福島第一原発事故が起きるまで約30%を担っていた原発は5%でしかない。2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする「カーボンニュートラル」を目指すという目標を実現するためには、再稼働も仕方がないだろう。
ただし、条件がある。大前提となるのは、前述した福島第一原発事故の総括と反省だ。政府は福島第一原発を建設した際に地元の自治体・住民に対して虚偽の説明をしていたし、東京電力は事故当時の状況発表で炉心のメルトスルーに関して大嘘をついていた。政府・自治体と地元住民のコミュニケーションや避難の判断基準も適切ではなかった。
この3つの問題について真摯に総括・反省を、無意味な原子力規制委員会も含めて原子力行政を抜本的に改革しない限り、再稼働に進んではいけないのだ。