企業概要
ビジョナル(4194)は、ハイクラス人材に特化した会員制転職サイト「BizReach(ビズリーチ)」を運営する企業。日本のダイレクトリクルーティング市場を切り開いたパイオニア的企業であり、その分野では確固たる地位を築いています。
ビズリーチを中心に、第2柱として人材管理システムの「HRMOS(ハーモス)」が成長しています。またこれら人材関連サービスのほか、M&A領域やセキュリティー領域、物流領域など人材分野から離れた領域にも進出し、事業を多角化させています。
報告セグメントは、「ビズリーチ」「ハーモス」及びその他HR Techサービスを展開する“HR Tech”セグメント、M&Aマッチングサイト「サクシード」や物流DXプラットフォーム「トラボックス」、脆弱性管理クラウドシステム「ヤモリー」、クラウドリスク評価「アシュアード」、クラウド活用と生産性向上の専門サイト「ビズヒント」を展開する“Incubationセグメント”の2つから成ります。
主力はHR Techセグメントで2022年7月期の売上構成比は95.4%でした。またビズリーチによる売上は全体の85.9%を占めます。
注目ポイント
業績は好調。企業による中途採用の強化や高度専門人材の活用需要の拡大を背景に、売上高は、2018年7月期の157億円→4年後の2022年7月期には439億円に2.8倍に、営業利益は13倍にまで拡大。足元2023年7月期第1四半期も好調で、主力のビズリーチの累積導入企業数は2022年7月期第4四半期比+1200社。
コロナ禍からのリバウンド需要があった前期と比べても40%以上の売上成長を記録しています。
今期はグローバルIT企業を中心とした採用自粛、また一部のSaaS企業部門における近年の採用強化の反動による影響がみられるものの、日系企業による採用ニーズは強く推移しており、求人数は増加傾向が続いています。経済動向には不透明感がありますが、年次利用中企業数は10400社を超えるなど、成長のための土台も継続して整ってきています。
ビズリーチが安定かつ成長していることからキャッシュフローも良好で、営業キャッシュフロー、フリーキャッシュフローいずれもプラスに推移しています。財務面も健全で、手元に314億円の現金等を保有しており6億円の借り入れを余裕でカバーしています。流動比率2.93倍、自己資本比率65.7%という盤石の財務基盤を持っており、不況耐性の高さに加え、事業拡大に向けた成長投資余力も高いと言えます。なお同社は粗利益率86.8%、営業利益率18.9%と利益率が高く、いずれも同業種平均値を上回っています。収益力の高さにより、ROE20%以上を実現しています。
株価は相場全体の調整もあって、高値の11000円超えから8000円台まで調整しており、過熱していた分が良い意味でそぎ落とされたと思います。人材サービス事業は景気動向を受け易いため、その分現在の不透明な経済環境はネガティブに受け止められますが、同社のファンダメンタルと共に、中途採用の取り組みが活発化していることやダイレクトリクルーティングのポテンシャルなど市場の成長ポテンシャルを評価し、中長期的な上昇を期待したいと思います。
【プロフィール】戸松信博(とまつ・のぶひろ):1973年生まれ。グローバルリンクアドバイザーズ代表。鋭い市場分析と自ら現地訪問を頻繁に繰り返す銘柄分析スタイルが口コミで広がり、メルマガ購読者数は3万人以上に達する。最新の注目銘柄、相場見通しはメルマガ「日本株通信」にて配信中。