動物は交通ルールを知らず、生息している場所では、周囲を注意した運転が必須です。たとえ予想できない突然の飛び出しで、小動物に衝突しても自車の制御は可能なので、不用意な進路変更による事故では、過失が否定されません。
大型動物との衝突や衝突回避の急ハンドルで事故になった場合、予見も回避も不可能であれば、刑事責任や民事責任を負うことはないでしょう。ただ、刑事では検察官が運転者の過失を証明する必要があるのに、民事の人身事故では、運転者の無過失を証明しない限り、賠償責任は免責されません。また、その証明に苦労すると思います。
なお、被害者側には、過失は考えられないのが普通ですから、賠償額の減額はありません。
【プロフィール】
竹下正己(たけした・まさみ)/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。
※週刊ポスト2023年2月3日号