ドライブ中に飛び出てきた「鹿」が原因で他の車に衝突したら賠償責任はどうなるか？　弁護士が解説

　自然豊かな土地で自動車を運転していると、車道に突然、野生動物が横切ってくることがある。その野生動物を回避しようとして、事故が発生した場合、過失があったと判断されるのか。弁護士の竹下正己氏が実際の相談に回答する形で解説する。

【相談】
　正月明けに、レンタカーを借りて北海道旅行。その際、肝を冷やしたのが、いきなり道路に飛び出してくる鹿でした。こんな大型動物とぶつかったら、一大事。いくら注意していても回避不可のアクシデントであり、仮にそのせいで他の車と衝突などしても賠償の減額を含め、罪が軽くなったりしますか。

【回答】
　運転操作に、過失があったと判断されるかの問題です。パターンとしては、大型動物との衝突で制御を失い、他車や通行人に衝突するケースと、飛び出した動物を避けようとして急ハンドルを切り、他車等に衝突するケースがあります。

　実際に、小動物との衝突回避の急ハンドルによる事故は散見します。以前、高速道路で狐を避けて中央分離帯に衝突し、停車中に後続車に追突された事故で、狐の侵入を許した高速道路の管理責任を問題にした裁判がありました。

　最高裁は、高速道路側の責任を否定する中で、「走行中の自動車が狐等の小動物と接触すること自体により、自動車の運転者等が死傷するような事故が発生する危険性は高いものではなく、通常は自動車の運転者が適切な運転操作を行なうことにより、死傷事故を回避することを期待することができる」と判断しています。

　他に、犬や猫との衝突回避で発生した事故でも、危険を認識した時点で徐行・減速、あるいは適確なハンドル操作が求められるとして過失を認めた事例もあります。