経済指標の結果が、投資家だけにとどまらず、多くの人の関心の的になっている。なかでも、消費者物価指数、CPIは相場を大きく動かす要因だ。このCPIをどのように読み解けばよいか。『世界一楽しい!会社四季報の読み方』などの著書がある個人投資家で株式投資講師・藤川里絵さんが解説するシリーズ「さあ、投資を始めよう!」。第28回は、「注目すべき経済指標、CPI」について。
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株式投資歴13年のわたしの投資キャリアの中で、これほど経済指標が注目されたことはなかったように思います。毎月発表される各国の経済指標によって、株式だけでなく、為替や債券も右往左往しています。
ふだんの生活で、経済指標なんて、まったく意識していないという人もいるかもしれませんが、知っていて損はありません。資産運用だけでなく、ビジネスや、日常生活を上手にやりくりしていくためにもかならず役に立ちます。これだけは知っておきたいという経済指標を、折に触れて紹介していきます。
世界中で注目されているCPIとはなにか
経済ニュースはもちろん、ワイドショーでも取り上げられるほどフィーチャーされているCPI。なんとなく分かっているような、いないような……。そんなモヤモヤをここですっきりさせましょう。
CPIとは、“Consumer Price Index”の略称で、日本では「消費者物価指数」と呼ばれています。わたしたちが購入するモノやサービスの価格の動きを示す指数で、ざっくり言うと、「物価が上がってんの? 下がってんの?」を判断するための物差しです。日本では、総務省が毎月19日を含む週の金曜日に、アメリカでは、労働省が毎月15日前後に発表します。
なぜ注目されているのか
一足先にコロナ禍における経済活動の抑制を解除した欧米では、一気に経済活動が再開され、モノの需要が拡大しました。いったんストップしていた生産やサービスの回復よりも需要のほうが大きいため、「モノが足りない! 配達が間に合わない!」といったサプライチェーンの混乱が起こりました。さらにロシアのウクライナ侵攻によって、エネルギーや食糧不足も発生。世界中でモノが足りない状況です。
供給より需要が大きいと、モノの値段は上がります。これがインフレです。インフレ自体はけっして悪いことではありません。モノの値段が上がる→企業が儲かる→賃金が上がる→消費や投資が活発になる……といった、よい循環が生まれます。だいたい前年比で2%くらいの上昇率がちょうどよいと言われています。ところがアメリカでは、2021年1月から急激に上昇し始め、2022年6月には前年比9.1%まで駆け上がりました。これほどのスピードで物価が上昇すると、賃金の上昇が追いつきません。いくらコロナ禍からのリベンジ消費が強いといえども、このままでは消費は落ち込み、経済成長が鈍化してしまいます。
そこでアメリカの中央銀行の役割を担うFRB(連邦準備制度理事会)が、需要を抑えるために政策金利の引き上げを行っています。2022年1月には0.25%だったFFレート(政策金利)は、12月には4.5%まで引き上げられました。これは異例のスピードです。それくらいアメリカの物価上昇が強烈だということです。今後も、CPIがどんどん上がっていくようなら、さらなる金利の引き上げを行わなければいけません。