格差が生じるのは、生まれによるのか、学歴か──。そんな問いかけが、若い世代にも突きつけられているようだ。
《高校生G:すごい豪邸……、こんな家に生まれた子どもは運がいいね。不平等だな。
高校生H:生まれた家とか国とか、個人が選べないもので差があるのは、不平等だとしても変えられないよ。》
生まれた家による不平等を嘆いたり、諦観したり。2人の高校生の会話はまるで「親ガチャ」を話題にしているかのようだ。実はこれは、今年の大学入学共通テストの倫理の問題の一節。試験終了直後から、SNS上では「親ガチャ問題が共通テストに出た!」と話題になり、ニュースでも報じられた。
「親ガチャ」とは「親を自分で選べないこと」を表す俗語だ。ソーシャルゲームのアイテムやキャラクターなどがランダムに出てくる「ガチャ」を、親子関係にたとえている。
だが見方を変えれば、この共通テストを解いていた高校生たちは、その時点で“親ガチャの勝者”なのかもしれない。彼らは「大学を受験できる」という状況にあるのだから──。
偏差値が測定できないボーダーフリーの「BF大学」
大学進学率は、毎年のように過去最高を記録し続けている。2022年の大学進学率は、大学、短大合わせて60.4%と、またも過去最高を記録した。1960年代前後の大学進学率は約10%だったが、1970年代に20%、1990年代には30%……と右肩上がりに伸び続け、いまや3人に2人が大学に進学する時代になっている。
その理由の1つが、大学に入りやすくなったことだ。大阪大学大学院教授で『日本の分断 切り離される非大卒若者たち』著者の吉川徹さんが言う。
「“大学に進めるのは学力の高い生徒で、高校卒業後に就職するのは学力の低い生徒”というのは古い認識です。いまでは、いわゆる“底辺校”と呼ばれるような偏差値の高くない高校からも3、4割が大学に進みます。商業高校や工業高校の大学進学率も高い。むしろ、将来進みたい道がない高校生が“とりあえず、大学にでも行っておくか”と、消去法で進学するケースが増えているのです」