大学進学率は、毎年のように過去最高を記録し続けている。2022年の大学進学率は、大学、短大合わせて60.4%と、またも過去最高を記録した。1960年代前後の大学進学率は約10%だったが、1970年代に20%、1990年代には30%……と右肩上がりに伸び続け、いまや3人に2人が大学に進学する時代になっている。
だが、「高校を出たら、大学に行くのが当然」という風潮は、就職を希望する高校生に暗い影を落としていると、『進路格差』(朝日新書)の著者で教育ジャーナリストの朝比奈なをさんが言う。
「企業の多くが、就職を希望する普通科の高校生のことを考えていないという現状があります。工業高校や商業高校などの生徒は、社会に出て働くための教育を受けている一方で、普通科の高校にはそうしたカリキュラムがない。現在でも高卒の就職者は15%以上いるのに、社会も企業も、普通科高校からの就職に目を向けていないのです」
文部科学省の「学校基本調査」(令和元年度)によると、高等学校(全日制・定時制)卒業者に占める就職者の割合は17.6%となっている。
大卒からの就職なら、同時に複数社に応募するのが当たり前だ。だが、高校生の就職はほとんどの自治体で「1人1社」が原則。企業が生徒に単願を求めているため、例年、9月中旬に行われる1回目の試験に応募できる企業は1社に限られる。就職の自由度は、大学生に比べてきわめて低い。にもかかわらず、高校側はその実態に対処できていないという。
「高校の教師は皆、大卒か院卒。そもそも、高校での就職について正しく理解できているとは言い難い。また、大企業はほとんどが高卒生の採用に意欲的ではありません」(朝比奈さん・以下同)