今年の大学入学共通テストの倫理の問題の一節は、試験終了直後から、SNS上で「親ガチャ問題が共通テストに出た!」と話題になり、ニュースでも報じられた。その内容は次のようなものだ。
《高校生G:すごい豪邸…、こんな家に生まれた子どもは運がいいね。不平等だな。
高校生H:生まれた家とか国とか、個人が選べないもので差があるのは、不平等だとしても変えられないよ。》
「親ガチャ」とは「親を自分で選べないこと」を表す俗語で、ソーシャルゲームのアイテムやキャラクターなどがランダムで出てくる「ガチャ」を親子関係にたとえている。この共通テストの問題文のように、「親ガチャ」という言葉は主に「親の経済力の有無」を語るときに使われることが多い。
だが真の親ガチャは、親の「非経済力」にあると、早稲田大学人間科学学術院教授で『新・日本の階級社会』著者の橋本健二さんは語る。
「受験のための塾や予備校の月謝などが『経済的資産』なら、家に勉強できる環境が整っているか、親が勉強を教えられるか、幼い頃から勉強の習慣を身につけさせられるか、そしてそもそも、親が勉強の大切さを理解しているか。こうした『非経済的資産』、すなわち『文化資本』があるかどうかが、本当の意味の親ガチャだと言えます。成績が悪い生徒の多くは、親の非経済的資産がない場合が多い」(橋本さん)
制度が拡充され、高校卒業後、さまざまな進路の中から好きなものを選択しやすくなった。だが、だからこそ、子供の将来を左右するものは、お金でも成績でもなく親の文化資本、すなわち「親の学歴観」になってしまったのだ。大阪大学大学院教授で『日本の分断 切り離される非大卒若者たち』著者の吉川徹さんが言う。
「例えば、両親がともにGMARCH(学習院大学、明治大学、青山学院大学、立教大学、中央大学、法政大学)出身なら、わが子にも同レベルかそれ以上の大学に行ってほしい、行けるはずだと考えます。大卒は大卒の配偶者を選び、首都圏に住み、首都圏で働き、それをわが子にも望む。その結果、親の学歴と子の学歴が直結するようになっているのです」(吉川さん)