学歴至上主義が非大卒者の自己肯定感を下げる負の連鎖
こうした文化資本のない家庭、いわば“親ガチャが当たりではなかった子供”は、大学全入時代の現代社会においても大学に進もうとしない。
もちろん、中には家計を支えるためにアルバイトをしている高校生や「ヤングケアラー」もいる。だが、勉強ができずとも、お金がなくとも大学に行ける制度を「利用しようとも思えない」家庭に生まれた子供は、一定数存在する。『進路格差』(朝日新書)の著者で教育ジャーナリストの朝比奈なをさんが言う。
「いま『学力低位校』といわれる高校は、かつての『ヤンキー校』とはまったく違います。親や教員に食って掛かって自己主張できるような生徒は非常にまれで、ほとんどの生徒がおとなしいどころか無気力で、おしなべて自己肯定感が低い。
親が勉強することに価値を感じていなかったり、偏差値の低い高校に通っていることで“自分たちは社会の中で主流ではない”“自分なんかが勉強しても仕方がない”と強く刷り込まれてしまっている。家庭の事情や本人のやる気のなさから部活動もせず、将来の目標もないため、AO入試や就職の面接で志望動機を言えないこともあります」
文化資本を持たなかった親がわが子に勉強させることができないと、子供は自己肯定感が低いまま、行きたい大学も、なりたい職業も見つけられなくなってしまう。
一部の学歴至上主義者が学歴を偏重してきたがために、大勢の非大卒者の自己肯定感を下げ、負の連鎖が続いている。これが学歴社会の弊害だ。