いまや3人に2人が大学に進学する時代、日本では大卒の生涯年収は非大卒の1.3倍というデータもある。学歴至上主義社会において、このまま「大卒者・非大卒者」の格差は拡大していくのだろうか。
大阪大学大学院教授で『日本の分断 切り離される非大卒若者たち』著者の吉川徹さんは、非大卒の若者のことを「レッグス(Lightly Educated Guys、軽学歴者)」と名づけた。従来の学歴至上主義社会では、レッグスの若者たちは“人生の負け組”にならざるを得ない存在として無視されていたが、吉川さんは彼らこそが「社会の宝」だと語る。
「例えば地方では、大学に行かずにレジ打ちや接客などのマニュアルワークの仕事に就いている人や、介護や保育といったエッセンシャルワークに就いている人も多い。彼らがいてくれなければ、社会は立ち行きません」(吉川さん)
国家公務員や地方公務員の割合を見ても、2~3割は最終学歴が高卒だ。税務職にかぎれば、大卒と高卒の割合は半々になっている。つまり、いまの日本社会を動かしているのは非大卒者なのだ。
「地方には、非大卒者の親の仕事を誇りに思い、あえて大学には進まず、親と同じ職種に就く子供も多いのです。彼ら、彼女らは仕事にやる気があって、地域への愛着も大きい。こうした非大卒の若者によって地方が保たれていることを知っている“学歴ゲームのプレーヤー”が多いとは思えません」(吉川さん)
教科書には書かれていない「本当の社会」を知らない学歴至上主義者が、レッグスを勝手に「貧しい」「賢くない」と決めつける。そのせいで、非大卒の若者たちはいまも自己肯定感をそがれ、高くない給与で働き続けているのだ。
大学名よりも能力を重視する社会になりつつあるとはいえ、大卒と非大卒の間の格差は大きく、吉川さんも「この風潮が完全に変わるのには20~30年はかかるかもしれない」と語る。