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「地域の子供たちのために」 市役所に「レジ袋に入れた1000万円」を寄付した79才理容師の真意と半生

 中学卒業後、手に職をつけるために理容師を志したが、それはこんな理由からだった。

「父親は堺では鉄工所に勤めてたんやけど、もともとは理容師をしていたみたいで、子供のとき古い写真を見た記憶があったんです。それで理容師になろうと。そう言うても庭でバリカンで髪を刈るのが当たり前の時代だったから、自分は理髪店なんて行ったことなかったけどね(笑い)」

 汽車で1時間、駅から歩いて1時間かけて鳥取市内の理容師学校に通い、1年の見習いを経て国家試験に合格、理容師免許を取得した。

「それから大阪に出てきて、いろんな店を転々とした。最初のお給料は1万円前後だったけれど少しずつ上がっていったし、どこも住み込みの理髪店だったから、寝るところもご飯も心配いらない。ぼくはお酒も飲まないし、使うことがなかったから自然に貯金できた。それにバブルの頃は、1000万円預けておけば10年後には2000万円になるような時代やった」

 堅実に貯金をすることができたのは、“母の教え”があったからだ。

「子供の頃、どこかに遊びにつれていってほしいと親にせがむと、母親が決まって『でんとく、でんとく』って言うんです。『外に出たらお金がいるやろ? だけど家にいればお金いらんやろ?』と。出ないと得するという意味で、『でんとく』(笑い)。

 働き始めたときも、母親から『仕送りするか、自分で管理するか、よう考えて決めてや』と言われたから、『自分でやる』言うて郵便局に口座を作って貯金を始めた。母に言われたことを実行してきただけやで」

元気の秘訣は1kgの鉄アレイ

 バブル崩壊後の1999年、不動産価格が下落したのを受けて、2階建ての店舗兼住居を購入。『イーグル』と名付けられたその店は、24年にわたって地域の人たちから愛されてきた。

 営業は月曜定休で火曜から日曜の朝8時30分から20時まで。カットは1400円~とリーズナブルな価格で、子供から80代まで常連客も多い。3か月に2回のペースで市内の高齢者施設での理容師ボランティアも長く続けている。

「店の近くに保育所があって、そこに通って来る子供たちの姿を見ていると元気が出るんや。寄付したお金は地域の子供たちのために使ってもらえたら、それでいい」

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