できれば“いい会社”に就職したい。自分の子供や孫が働く会社は“いい会社”であってほしい──。その参考になるのが実際にその会社で働く社員の「クチコミ」だ。日本最大級の就職・転職サイトの投稿からは有名企業の“実態”が見えてきた。
少子高齢化・人口減少などの影響で、国内のあらゆる産業において将来にわたる人手不足が深刻化している。
企業は人材確保のために様々な策を講じるが、従業員の側も、より良い環境を求めて転職を考える人が増えているようだ。
マイナビの調査によると、2021年の正社員(20~50代の男女)の転職率は前年比2.1ポイント増の7.0%で、過去6年間で最も高かった。
ただ、転職サイトの「求人情報」や各企業のホームページで「良さそうだ」と判断しても、実際に入社してみるとギャップを感じることは多い。
自分にとって本当の“優良企業”を見抜くには、どうすればいいのか。ベストセラーになっている『1300万件のクチコミでわかった超優良企業』(東洋経済新報社)の著者で、転職・就職のための情報プラットフォーム「OpenWork」代表の大澤陽樹氏は「クチコミ」の重要性を説く。
「これまでは入社後にミスマッチがあっても終身雇用や年功序列があるので我慢して働くこともできました。しかし、今は個人が責任を持ってキャリアを築く時代です。求人情報には載っていない組織文化や退職理由などを知るには、実際に働いている人や退職者の生の声が重要なのです」
そこで大澤氏が着目したのが、“中の人”の声を集めて公開する手法だ。
「OpenWorkでは現在、登録者に対して1300万件を超える社員のクチコミと、8項目からなる評価スコアを約6万社分、公開しています。大企業では1社につき1000人以上が登録しており、クチコミは数千件にのぼります。これまで採用に関わる情報の発信主体は企業でしたが、そうした情報の非対称性をなくしていこうと取り組んでいます」
しかし、ネット上のクチコミでは信憑性が問われることになる。
「クチコミは匿名表記ですが、現役社員・退職者が投稿するには最初に実名登録が必要です。投稿後は1件ずつ当社のガイドラインに沿って審査し、そのなかに真偽不明な情報や誹謗中傷があれば、掲載しません」