また、働き方が多様化するなかで、今後は確定申告の“前提”を変えてしまうという発想もあり得る。定年前後のサラリーマンが、フリーランスに転身するという選択だ。営業職でキャリアを重ねた会社員が、退職して個人事業主として会社の仕事を手伝い、退職前と同じような仕事をして営業代行費を受け取るといったケースは増えている。そうなると「アウト/セーフ」の前提そのものが変わってくる。
「フリーランスになったら基本的には事業者として税務署に開業届を提出し、確定申告をします。医療費控除や雑損控除のための確定申告とは全く違った性質のものになり、どれだけの経費を使ってどれだけ売り上げを立てたかを申告して所得を確定していくのです。
そうしたなかで、事業に関連づけることで様々な経費が認められるケースが少なくありません。打ち合わせで食事や飲みに行った時の領収書も経費になりますし、自宅で仕事をするなら家賃や光熱費の一部を経費に入れることもできます」(木下氏)
自宅を事務所として申告する場合、「住宅ローン減税は居住用部分にのみ適用可能なため、控除額が減る可能性がある」(同前)といった点には注意が必要だ。
「フリーランスになることで、小規模企業共済に加入して毎月1000~7万円の掛金が全額所得控除(小規模企業共済等掛金控除)になるなど、様々なかたちで所得を圧縮する工夫の余地が生まれます」(木下氏)
アウトとセーフの境界線をどこに設定するかも含めて、考えるべきことは多いのだ。
※週刊ポスト2023年2月10・17日号