とくに重要なチェック項目4つ
数多く発表される項目の中で注目すべき重要なものは4つあります。
【1】非農業部門雇用者数
通常、雇用統計といえば、非農業部門雇用者数を指すことが多く、ぜったい外せない統計です。季節や天候の影響を受けやすい農業部門以外の産業分野で、政府や民間企業に雇用されている人数の前月からの増減をまとめたものです。
20万人増が通常よしとされている目安ですが、コロナ禍で解雇された人が、その後急激に雇用されたため、しばらく異常値が続いています。ここのところやっと20万人台の通常運転に戻ってきたところです。
【2】失業率
アメリカ国内の失業者数を労働人口で割って算出し、割合と増減をまとめたもの。失業者数は16歳以上の働く意志を持つ人たち、労働人口は失業者数と就業者数をあわせた数で算出されます。ポイントは、16歳以上の働く意志を持つ人たちを失業者と呼ぶこと。働く意志のない早期リタイア組や、専業主婦などは失業者には入りません。
ここ最近の失業率は、3%台とコロナ前よりも低い位置にあります。ニュースでは、マイクロソフトやアルファベット(Google)など大手ハイテク企業の大量リストラが報道されているので、失業者がゴロゴロいるのかとイメージしてしまいますが、まったくそんなことはないようです。
【3】平均時給
農業部門以外の主要産業における、1時間当たりの平均賃金とその増減をまとめたもの。平均時給が上がるということは、雇用が逼迫していることを意味しますので、こちらもインフレ圧力になります。昨年12月の雇用統計が発表されたとき、平均時給の前月比が、予想0.5%に対して、結果0.3%と低かったことを好感して株価が上昇しました。
時給の上昇率が低下して株が上がるなんて、違和感がありますよね。インフレ率が上がってほしくない今のような状況だと、“Bad news is good news”になるのです。
【4】労働参加率
コロナ以降、とくに注目度が高まった項目。生産年齢人口(15歳~64歳の人口)に占める労働力人口(就業者+完全失業者)の割合を表します。
米国では、他の国に比べてコロナ以後、労働参加率の戻りが悪く62%程度に止まっています。その大きな理由として、55歳以上の人たちが、コロナを機にリタイアして労働市場に戻ってこない現象があるようです。
アメリカでは、「401k」と呼ばれる確定拠出型の個人年金制度が整っています。若くから積み立てしている人は、55歳くらいで十分な資産となっており、リタイアしても生活ができるそうです。羨ましい話ではありますが、そのため人手不足でインフレが加速し、アメリカ経済を冷え込ませるというジレンマを抱えています。