高齢者を狙った詐欺事件は後を絶たない。女性セブンの名物ライター“オバ記者”こと野原広子さんの叔母(80代)も、危うく要らぬ工事に高いお金を支払う羽目になりそうだったという。後に叔母の話を聞くと、なぜ一人暮らしの高齢者が狙われるのか、その理由の一端が見えてきた。オバ記者が、騒動を振り返る。
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連続強盗事件の被害が各地で相次いでいる。「割のいい闇バイト」という言葉につられた若い男たちがかかわっているらしい。
「ちゃんと地道に働けよォ!」とテレビを見ながら、逮捕されたアンちゃんたちにいつものように毒づいていた私。すると、都内の一戸建てでひとり暮らしをしている叔母(87才)から電話がかかってきた。
「あ、ヒロコちゃん? あのね、1週間くらい前に若い子が3人やってきて、うちの屋根が壊れているって言うの」
連日、テレビで報じている詐欺の手口のイロハのイではないの!
聞けば、マニュアル通り。若者3人は近所の古いマンションの屋根工事をしていて、たまたま叔母宅の屋根瓦がめくれているのを見つけたんだそうな。叔母の家は築50年。どこもかしこも老朽化している。
「瓦がめくれていて、それが飛び散ってよそ様の家の窓ガラスを壊したって言うのよ。でもそれを確かめたくても、私は屋根に上れないじゃない? だからヒロコちゃん、ちょっと来て屋根を見てくれないかしら」だとさ。
てかさ、その近所のマンションの屋根工事をしていたという若者3人は作業着を着ていたわけ? 窓ガラスが割れた家ってどこよ? そこを聞いてお詫びに行かないと。穴だらけの怪しい話にツッコミを入れると、電話の向こうで叔母が激高し始めた。
元から、スイッチが入ると思いつく限りの罵声を相手に浴びせかける性格だけれど、ここ2、3年は思い込みや勘違いが激しくなり、早い話、私は顔を見るのもイヤ。たまに「夕飯でも食べに来ない?」と気弱な声で電話をかけてこられても、なんだかんだ言ってスルーしていたの。
とはいえ、叔母は昨年の春に93才で亡くなった母親の妹で、茨城で生まれ育った私にとって東京の拠点になってくれた人だ。その恩を忘れたわけではないから、時々様子を見に行っていたけど、そのたびに、ご縁もこれまで!ということになるのよ。