直球質問に「それはあるわね」と素直に認めた
話を屋根に戻すと、叔母は若者3人をひとまず追い返した。でも、その3日後、今度はキチンとした身なりの人が叔母の家の屋根から下りてきて(えっ、ナゼ!?)、修理をすすめてきたという。
「それでいろいろ話していたら、『いまなら工事費66万円』だって。契約書にハンコ? 押したかしら。あ、押したわね」
だいたい自分ちの屋根に勝手に上られたら迷わず警察に通報でしょうが! なんで家に上げて、言われるがままハンコなんか押してるのよ!
「そうなのよね。だからそんなに屋根が壊れているのか、見てくれない?」って、あのね、見るべきものは屋根じゃなくて、契約書!!
あまりの腹立たしさについ、「わかった。午後から行くわ」と私。それで契約書を見たら工事日までに数日あるし、クーリング・オフの期間内だ。私は契約書に書かれた会社に電話をしてこう言ったの。
「身内の者ですが、本人が急に咳をし出したので、今回の契約は白紙に戻してください。屋根の修理は私からお願いの電話をしますから。これからは私が窓口になるので、どうぞよろしくお願いします」
すると、相手は意外にあっさり引き下がったわよ。とはいえ、向こうは家に上がりこんでいて、叔母がひとり暮らしなこと、少しボケていること、どのくらいのお金ならすぐ出せるかってことも調べたに違いない。こちらとすれば、いきなり相手を追い詰めてもロクなことはないと思ったから、丸い話に収めたわけ。
だけど、年寄りがやっかいなのはここからなのよ。叔母がなぜ契約書に判を押したのか、久しぶりに話しているうちにわかってきたの。怪しい業者の話をみんな信じたわけではなくて、何日も人と話さない寂しさに、目の前に現れた親切そうな人を追い返す気にならなくなったのね。
「寂しくて話し相手がほしかったの?」と直球で聞くと、珍しく素直に「それはあるわね」と認めてたっけ。