相続税を節約するために、生前贈与を検討する人も多いかもしれない。年間110万円までなら基本的に贈与税はかからないが、それ以上だと贈与税がかかる。そして、相続税と贈与税を避けるための行為が裏目に出ることもあるという。
埼玉県の主婦Sさん(62才)は、高齢の両親が介護施設に入居するにあたり、両親から実家を買うことにした。
「両親は“贈与する”と言いましたが、贈与税を取られたくなかった。両親が元気なうちに安く買えば、贈与税も相続税もかからないと思って、相場2000万円の実家を500万円で買いました。なのに、税務署から贈与税を払うように言われました。確かに値段は安いですが、ちゃんとお金を出して買ったのに──」
税理士で公認会計士の木下勇人さんによれば、不動産を相場より極端に安く買うことを「低廉譲渡」といい、相場との差額は「贈与」とみなされる。
「不動産の価値は路線価などで決まります。本来2000万円のものを500万円で手に入れたとなれば、実質的には“1500万円は親から贈与してもらったようなもの”ということ。したがって、このケースでは1500万円に贈与税が課せられます。同様に、子供の負債を親が肩代わりした際も“みなし贈与”になり課税されます」(木下さん)
不動産登記の手続きで途方に暮れる
不動産に関する手続きに手間取るケースは少なくない。静岡県で先祖代々の土地に住む会社員の女性Iさん(56才)は、不動産の登記手続きに追われている真っ最中だ。
「登記をしないとお金がかかると聞いて慌てて手続きしようとしたら、曾祖父の代から登記がされていませんでした。叔父が転勤族で、相続人全員分の戸籍を取り寄せるところでつまずいてしまって、途方に暮れています」