ロシアのウクライナ侵攻によって、ウクライナからの穀物供給が不足し、世界的に価格が高騰。輸入に頼る日本も大きな影響を受けている。紛争のみならず、干ばつや水害などの異常気象、病害虫の発生など、穀物生産はさまざまな影響を受けやすい。
しかし、遺伝子組み換え技術によって気候変動や病気に強い作物の栽培がより広範に行えるようになれば、食料システムは紛争や感染症などの影響を受けにくくなるといわれている。すでに遺伝子組み換え(GM)食品は大量に市場に出回っている。
さらに最先端の技術によって生み出される「ゲノム編集食品」も市場に出回り始めている。食品問題評論家の垣田達哉さんが解説する。
「ゲノム編集とは、ほかの生物の遺伝子と組み換えるのではなく、その生物が持つDNA配列の一部を切り離すことをいいます。はさみの役割をする酵素(Cas9)と、壊したい場所まではさみを運ぶ案内役のガイドRNAを用いて行われます」
日本ですでに流通しているのが、「22世紀ふぐ」だ。近大マグロで知られる近畿大学の養殖技術と京都大学のゲノム編集技術のコラボによって生み出されたフグで、通常の1.9倍の早さで成長し、必要な餌量は4割減だという。
成長の早さの秘密は、食欲の調節にかかわる遺伝子を破壊し、旺盛に餌を食べ続けるようにしたこと。その分、養殖にかかる費用は安くなり、環境への負荷も減らすことができるというわけだ。
このフグはすでに京都府宮津市の「ふるさと納税」の返礼品に加えられ、人気を集めている。ほかにも太ったマダイやGABAを多く含むトマトなどが国内で流通し始めている。だが、特定非営利活動法人日本消費者連盟事務局長の纐纈美千世さんはこう警鐘を鳴らす。
「日本人はGABAが不足しているから“高GABAトマトがいい”とか、フグやタイが安く買えるなど、いいイメージばかりが先行しています。しかし、直接的な害があるかどうかも、食べ続けて10年後、50年後にどんな影響があるかも調べられていない。GM食品については形式的とはいえ国の審査がありますが、ゲノム編集に関しては審査どころか動物実験も行われていない。とても安全だとは断言できません」