40代、50代になって人事異動で部署や職務が変わった途端、その部署での「技能が足りない」と給料ダウンになることもありうる。
それをカバーするのが、サラリーマンが新しいスキルを身につけるリスキリングによる能力向上になるが、前出の森永氏は、これは「リストラの罠」だと見る。
「20代の人だったら新たな技能を身につける可能性はあるかもしれないけれど、40代以上は難しい。岸田総理がリスキリングしてIT技術者になってみなさいと言いたい。リスキリングできなければ低賃金のジョブにいくしかない。中高年にとってリスキリングは、イコール諦めの境地に至らせる再教育になるんです」
労働市場改革で賃上げの恩恵を受けるのは一部の大企業の若手社員が中心で、多くの中高年サラリーマンには賃下げや退職金廃止、リストラの道が待ち受けている。
「実は財界は、この労働市場改革を安倍政権の時にもやらせようとしました。でも安倍さんは財界の言うことを聞かなかった。岸田さんは、どうなるかよくわからないまま、いわゆる“聞く力”を発揮して財界や財務省の言う通りに進めている」(同前)
これが岸田政治が続くことの怖さなのだ。
※週刊ポスト2023年2月24日号