岸田政権の掲げる「異次元の少子化対策」が注目されるなか、「仕事と育児の両立」は女性のみならず、男性にとっても重要なテーマとなりつつある。政府は男女とも「育児休業」がより柔軟に取得できるよう法改正を進めており、昨年10月からは出生後8週間以内に父親が2回(計4週間)取得できる「産後パパ育休」(出生時育児休業)も新たに始まった。一方、育休中の男性については、家事や育児にあまり参加しない「取るだけ育休」の問題も指摘されている。その実態はどのようなものか。長女の出産後、夫が3か月の育休を取ったという30代女性に、フリーライターの吉田みく氏が話を聞いた。
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徐々に広がりつつある男性の育休だが、2022年11月に公表された民間企業の調査によると、国内大手43法人における男性育休の取得率は5%以下、取得期間別の割合は「1週間以上1か月以内」が最多だった(Works Human Intelligence調べ)。政府は男性の育児休業取得率を「2025年に30%」とする目標を掲げるが、達成にはまだ課題が多くありそうだ。
課題の多くは制度面にあるが、育休を利用して家事や育児を共同で担う夫婦にも、乗り越えるべきハードルがある。生後8か月の長女を育児中の都内在住の会社員・リナさん(仮名、30歳)は、育休中であるはずの夫が“戦力外”だったことを話してくれた。
「私の出産後、夫が3か月の育休を取りました。初めての育児ということもあり、始まる前はとても心強く感じていたのですが、実際は足手まといでしかありませんでした……」(リナさん、以下同)
夫にはオムツ交換や子供の寝かしつけなどをしてもらいたかったというリナさん。しかし、最初は夫なりに頑張っていたものの、リナさんの合格点には及ばない育児だったという。
「オムツテープがゆるゆるで便が漏れてしまったり、テープをきつく止めすぎて苦しそうだったり……。私が『赤ちゃんがかわいそうだから、ちゃんとやってよ!』と注意すると、『じゃあリナがやったらいいんじゃない?』と返されました。私は出産後の回復期にあたる産褥期でまだ体はボロボロなのに、諦めて私に丸投げってあり得ないです」
赤ちゃんの寝かしつけも夫の手には負えなかった。母であるリナさんの抱っこでないと寝ない問題が発生したのだ。夫も頑張ったものの、ついに泣き止ませることができなかったという。