予測を上回るスピードで、少子化が加速している。厚労省が昨年12月末に公表した「令和元年(2019)人口動態統計の年間推計」によると、2019年の出生数は86万4000人。前年から5万4000人減少し、明治32(1899年)の統計開始以来、最も少なくなる見通しだ。
出生数から死亡数を差し引いた、日本の全人口の減少数は51万2000人で、これは人口55万人の鳥取県とほぼ同数となる。このまま人口の減少が続けば、税収が減り、社会保障制度の崩壊の可能性すら囁かれている。
「少子化」は何となく知っていても、これほどの規模と速度で進んでいることに衝撃を受ける人も多いはずだ。近年の出生数低下の要因として、まず「少婚化」が指摘されている。1950年の婚姻件数は71万5081件だったが、2019年は58万3000件だ。
女性の大学進学率・就業率が上がるなか、出産や子育てによって“失われる利益”は少なくない。出産や育児のための勤務時間の短縮や昇進の遅れ、退職を余儀なくされるなどで、本来手にするはずだった収入が得られなくなるリスクも上がる。さらに、金銭面や育児休業といった制度面、働き方のほかにも、女性の出産を阻む大きな壁がある。
それは、日本独自の「風土」や「雰囲気」に他ならない。象徴的な事例が、小泉進次郎環境大臣(38才)に向けられた「育休バッシング」だ。妻の滝川クリステル(42才)が1月17日に男児を出産後、「産後3か月以内に約2週間の育休を取る」と宣言したのがことの発端だった。
男性からは「大臣が育休とは何ごとか。税金のムダ遣いだ」という反発が多かったが、ソフトインテリジェンス塾代表でビジネスアナリストの中川美紀さんは、「出生数90万人割れという大きな問題のなか、そうした批判が上がること自体に“古さ”を感じる」と話す。一方の女性からは、育休取得の是非より「たった2週間で育児の何がわかるのか疑問」という声が多く、単なるパフォーマンスと受け取られたようだ。