AI発展によって触発される企業の裾野
金融関係者の多くはChatGPTを使った業務の効率化に大きな期待を持つかもしれないが、証券日報の記者によれば、まだ一気に普及するとは考えにくいようだ。
例えば投資顧問AIでは顧客に寄り添う気持ちを醸し出すのは難しく、ファイナンスの領域においては、必須となる専門知識、ポートフォリオモデルなどに関してまだ改良余地がある。アナリスト業務に関しては、レポート作成のほかに、顧客を連れて企業訪問したり、市場情報を一手に把握しておく必要があるが、いずれも現在のChatGPTでは難しい。例えば、株価データや業界に関する指標などを時系列で入手しなければならないし、アナリストレポートで要求される知識やデータに関しては正確性が要求されるが、こうした点で現状のChatGPTは能力不足だ。
現時点でのAIには強みもあれば弱みもある。金融機関よりも、例えばメタバース、AR/VRのような環境の内で、聞かれる質問がある程度限定できて、それほど高い正確性を求められない分野の方が、相性が良いのかもしれない。
専門家たちの意見によれば、トレーニングの大規模化に対する計算力に関しては現在のコアチップでも能力は足りているようだ。しかし、今後、AI化の波が更に高まるに連れて、GPUなどのコアチップ産業の更なる進化が不可欠となる。AI発展によって触発される企業の裾野は結構、広がりがありそうだ。
文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うフリーランスとして活動。楽天証券で「招財進宝!巨大市場をつかめ!今月の中国株5選」を連載するほか、ブログ「中国株なら俺に聞け!!」も発信中。