日本銀行・黒田東彦総裁(78)の後を受けて、元日銀審議委員で共立女子大学教授の植田和男氏(71)が新総裁に起用される。4月にもスタートする日銀の新体制で、日本経済はどう変わっていくのか。
それを読み解くうえで、まずは植田氏がどのような人物なのか知っておきたい。
「米マサチューセッツ工科大学で、世界の中央銀行の理論的支柱である世界的な経済学者、スタンレー・フィッシャー氏の教え子のひとりで、いわゆる学者肌。何事も理論的に考えて、筋を通そうとする。
日銀の審議委員も務めたことから実務も知り、バランス型と評されるが、本来的には器用に振る舞えるタイプではない。たとえば、日銀の審議委員時代の2000年8月にゼロ金利解除を決めた会合で数少ない反対票を投じるなど、意に沿わない場合ははっきり口にする硬骨漢でもある」(日銀関係者)
植田氏は、日銀審議委員時代に「量的緩和政策」を理論面から支えた人物で、人事案が明らかになった2月10日、記者団に対し、「現在の金融政策は適切。当面、緩和は続ける必要がある」と話したように、10年続いてきた黒田日銀の金融政策を大きく変えるとは考えにくい。
とはいえ、異次元の金融緩和によって、国債の大量購入やETF(上場投資信託)購入を通じて日銀が名だたる日本企業の大株主に名を連ねるようになるなど、その“副作用”ももはや無視できなくなり、課題は山積みだ。
それに対し、前出・日銀関係者が懸念するのが、あくまで理論で通そうとする植田氏のスタンスだ。
「政府と足並みを揃えるように大規模な緩和を続けてきた黒田総裁とは異なり、植田氏は日銀の独立性を重んじる傾向がある。日銀にとってはベストな選択かもしれないが、はたして岸田政権にとってはベストといえるのか? 場合によっては政府のコントロールが効かなくなる可能性もある」