岸田政権は2024年からNISA(少額投資非課税制度)の制度を大きく拡充する方針だ。運用益が非課税となる上限額や適用期間が拡大され、政府が掲げる「資産所得倍増計画」の柱とも位置づけられている。物価高によって家計が圧迫されるなかで新制度をうまく使って資産形成していきたいが、具体的にはどのように活用すればいいのか――。
本来、投資で得た利益(運用益)には約20%という高い税率が課されるが、これが一定額までの投資について非課税になるというのがNISAだ。現行制度では個別株や投資信託、ETF(上場投資信託)での運用が可能な「一般NISA」と、金融庁が指定した一部の投資信託等が対象となる「つみたてNISA」に分かれている。一般NISAの非課税枠は年間120万円×5年間、つみたてNISAは年間40万円×20年間までとなっており、いずれか一方しか選択できなかった。
これが2024年からの新NISAでは大きく拡充されるのだ。行政書士でファイナンシャルプランナーの柘植輝氏が解説する。
「まず、現行制度で一般NISAが5年、つみたてNISAが20年となっていた非課税保有期間の制限が撤廃され、無期限となります。加えて非課税投資枠も大きく拡充され、現行の一般NISAに相当する『成長投資枠』で年240万円まで、同じくつみたてNISAに相当する『つみたて投資枠』が年120万円までとなります。新NISAでは2つの枠が併用可能となるので、最大で年360万円の非課税投資枠が使えるようになるのです。成長投資枠では元金が1200万円、2つの枠の合計で1800万円までが保有限度額となります」
非課税枠が拡大され、2つの枠が併用可能になったことで、投資の選択肢は大きく広がる。少額をコツコツと長期間にわたって積み立てていくやり方もあれば、ある程度まとまった資金で一度にひとつの金融商品を購入する方法もある。そうしたなかで前出・柘植氏は「基本的にお勧めするのは、投資信託を一括で購入して長期保有するやり方です」と指摘する。
「個別株や投資信託の売買を繰り返しながら利益を出そうと思ったら、株価や基準価額が下がったタイミングで買い、ある程度上がった時に売るということを続けなければなりませんが、プロでも正確に読み切るのは至難の業です。ひとつの商品の中で運用先が分散されている投資信託を購入して、それを長期間放っておくのが、いちばん賢明なやり方だと考えられます。
たとえば、『eMAXIS Slim 全世界株式(オールカントリー)』という投資信託は、世界中の国・地域の主要な会社の株の成長率に連動するようなタイプの商品ですが、過去30年間の平均で年7.8%の値上がりを記録しています。毎年7.8%ずつ増えていけば、30年間で投資資金は10倍まで膨らみます。十分すぎる投資成果ではないでしょうか