コツコツ積み立てと一括投資のパフォーマンスの違い
柘植氏は、「投資する商品のなかでリスク分散がなされていて、長期で安定的な利回りが狙えるという前提であれば、コツコツと積み立てるよりも一括で投資したほうが利益は大きくなる」と続ける。
「たとえば、360万円の資金を投資に回すとして、一度に360万円の投資信託を買うのと、10年間にわたって積み立て投資するケースを比べてみましょう。一度に360万円を投資して、平均年3%で10年間運用すると、元金と利息の合計金額は483万8000円になります。手数料等を考慮しない計算ですが、最初に投資して、“あとは寝ているだけ”で約123万円の運用益になるわけです。それに対し、10年間にわたって毎月3万円ずつコツコツと積み立てをして、10年後に計360万円を投じました、というやり方だと元利合計で418万3000円にしかならない。同じ360万円を投じて年3%で運用しても、利益に約65万円の違いが出るという試算になるのです」
成長する市場に長期的に投資するのであれば、少しでも早く始めたほうがメリットは大きい。まとまった金額を一括で投資しておいたほうが、将来的なリターンは大きくなる。積み立て投資と違って、投資タイミングのリスク分散はできないが、その分は投資対象の分散でカバーするという考え方だ。
前述の通り、新NISAは成長投資枠が年240万円、つみたて投資枠が年120万円となる。
「当然、人それぞれ投資に回せる資金がどれだけあるかにもよりますが、余力が十分にあるなら、運用先が世界各地にリスク分散されたタイプでなおかつ手数料が低い投資信託を選んで240万を成長投資枠で一括購入する。さらに、つみたて投資枠を併用するなら毎月10万円ずつ同様の商品を買っていくのがいちばんいいやり方でしょう。世界経済には浮き沈みがもちろんありますが、長期的に複利方式でお金が雪だるま式に膨らんでいく方法が望ましいのです」
いずれにせよ、市場の成長を享受するためには、長期投資を前提にしたいということ。投資である以上、元本保証がないのは前提だが、リスクを抑えながらどう活用するのがいいのか、新制度開始まで1年を切るなか一人ひとりが考えていくことが重要だろう。(了)