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富裕層の“相続税対策の王道”マンション節税にも落とし穴 相続が終わった後に「まさか売れなくなるなんて…」

タワマン節税の効果は大きいものの…(イメージ)

タワマン節税の効果は大きいものの…(イメージ)

 政府・与党が、タワーマンション(タワマン)などの不動産を活用した相続税の節税にメスを入れようとしている。昨年末にまとめられた令和5年度与党税制改正大綱では〈相続税におけるマンションの評価方法ついては、相続税法の時価主義の下、市場価格との実態を踏まえ、適正化を検討する〉と明記され、1月30日には国税庁で検討を進めるための第1回有識者会議が開かれた。

 課税強化が検討されているのは、いわゆる「タワマン節税」だ。タワマン購入時の「市場価格」と、相続税を算出する際に使われる「相続税評価額」に乖離があることを利用した手法である。現金のまま相続するよりも、その現金で買ったタワマンを相続したほうが、“財産が少ない”とみなされ、相続税額を減らせる現状があるのだ。

 タワマン購入による“圧縮効果”は非常に大きい。前述の有識者会議の資料では東京の物件で「市場価格1億1900万円→相続税評価額3720万円」(43階建ての23階部分、築9年、67.17平米)、福岡の物件で「市場価格3500万円→相続税評価額1483万円」(9階建ての9階部分、築22年、78.20平米)といった事例が挙げられていた。市場価格と比べて相続税評価額は、2分の1~3分の1といった水準になるわけだ。

 相続関連の著書が複数ある税理士法人レディング代表の木下勇人税理士が解説する。

「タワマンの相続税評価額は、建物部分が固定資産税評価額によって算定され、土地(敷地権)については路線価から算出していきます。以前は低層階の部屋も最上階の部屋も床面積が等しければ同じ相続税評価額になっていたために、市場価格が高くなる高層階を買った人ほど大きな節税効果を得られました。2017年の税制改正で見直しがあり、高層階と低層階で固定資産税評価を変えたのですが、50階の部屋が1階の部屋に比べて1割程度上昇するにとどまり、タワマン節税が有効である状況が続いてきました。そのため、今回はさらなる制度の見直しに乗り出したということです」

相続税がゼロになったけど…

 今後、有識者会議などでどのような議論が進むかは、まだ見えない部分が大きいという。木下氏が続ける。

「まだ、財産評価基本通達と呼ばれるルールの改正の叩き台をまとめる議論が始まった段階です。もちろん、一部の物件の相続税評価額を高くする方向であることはたしかですが、有識者会議では20階以上の“タワマン”だけでなく、それ以外のマンションの評価法も見直すべきではないか、といった意見もあるが、詳細は決まっていません。相続税評価額を上げすぎると不動産市況に影響を与えて経済を停滞させる懸念もある。節税を目的とせずにタワマンを買っている人もいるので、難しいところです。

 一方で、不動産を活用した相続税対策はタワマン節税に限らず色々とあります。たとえば土地を持っている人がそこにアパートを建てて賃貸ビジネスを行なうことも相続税対策になりますが、現時点でそうした手法は評価見直しの議論の対象にはなっていません」

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